アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
母と狗(5)
-
なら自分は――次郎の子供に当たるのだろうか。優しくするのは、そういうことだと。しかし本当に子供であれば、躯を重ねる意味はない。
次郎はなにを思って、そうしているのか。
じっと次郎を眺めれば、にこりと笑い、吉春の唇を塞ぐ。
「嫌だ!」
ぶわりと湧いた嫌悪感に肩を押せば、ガラリと横開きの玄関が開く。
「あらあら、騒がしいと思ったら吉くんじゃない! 今日もかぁいいわね」
「て、店長っ!?」
「言っていた通り、晴子に会いに来たのね」
現れた店長に目を丸めて唖然とすれば、聞き流せない言葉が聞こえてきた。目の前の長身の男は、笑みを浮かべながら吉春を見ている。
「え……? な、に……? おわっ!?」
「――こちらへ」
次郎に担ぎ上げられた吉春は、顔を引き締めた店長を初めて見た。――これはきっとよくないことが始まると、その空気で察しがついてしまった。
□■□■
次郎に連れてこられた先は、ひとつの和室である。奥には簾がかかり、その向こうには一組の布団が敷かれていた。その上に下ろされた吉春は逃げようと暴れるが、次郎の手に封じられてしまう。力の勝てない相手に押し倒され、ネクタイでがちがちに手首を縛られてしまえば、逃げることなどできないだろう。
「ひっ……、や、次郎っ」
胸をまさぐられながら首筋を滑る舌に躯が跳ねてしまう。しかし親子だ。この行為は、タブーとされていることである。「嫌だ」と頭を振れば、次郎の躯が離れていく。
「嫌がる意味が解りません」
「っか……、母さんに、会わせてくれるって、言った、だろ」
「言いましたが、すぐに会わせると言った覚えはありませんよ」
「んっ……、でもっ、お、オレはっ」
「昨日は私も我慢をしたのですよ。今日も我慢をしろというのは、無理があります」
「んん……! ……っん、だけどっ、オレはぁ……、じろ、と、母さんの子供っ、で……次郎はっ」
「――違いますよ。私は晴子を孕ませたりはしていませんよ。ですから、なにも心配はいりません」
「そ、れ……本当?」
「はい。私の可愛い吉春」
唇を塞がれるが、さきほど湧いた嫌悪感はない。次郎の子供ではないと解ったからだろう。
次郎に与えられた温もりが、タブーにならなくてよかった。きっとそうなったら、ぎこちなくなる。それは嫌だ。ひとりしかいない家族と、距離をおかなくてはならないのはどうしようもなく辛い。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 12