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花火を一緒に見ようと言ったのは、新見君だった。
「本当に僕なんかとで、良いの?」
偶然一緒になった帰り道、困惑する僕に苦笑して、僕と行きたいんだと言ってくれたのも新見君だった。
「明日、神社の鳥居に19時な。遅れるなよ」
じゃあな、と輝く様な笑顔で新見君は駆けて行った。
僕は瞬きを繰り返し、夢の様な出来事に一人心を震わせていた。
僕にとって新見君は、近付きたいのに近付けない、手の届かない遠い人だった。
いつも沢山の友人に囲まれ、女の子達は皆、新見君に夢中になった。
運動も勉強も新見君に敵う人は誰もいない。
二重のキラキラとした目も、さらさらとした髪も、見上げてしまう程高い背も、優しくて明るい性格も、全てが魅力的だ。
そんな新見君に密かに恋心を抱いている僕は、その真逆の人間だ。
何もかもが違うのだ。
同性だという事も含めて、はなから望みのない恋だ。
新見君の彼女は、皆可愛くて綺麗だった。
同性しか好きになれない僕には、この恋をどうする事も出来ない。
だから想うだけで良かった、それだけで。
でも、今日、僕は新見君に一緒に花火を見ようと言われた。
何の接点もない、一言の会話もした事がない僕に声を掛けてくれた。
だから信じられなくて、新見君に何度も聞き直したし、相手を間違えていないか、理由はなんなのかと色々聞いた。
「俺はずっと椎名の事を知っていたし、話したいと思っていたよ。放課後、花壇を見ている椎名を見たんだ。ものすごく難しい顔をして、一生懸命花の手入れをしていたから気になって何度か上の窓から見ていたんだ」
まさか見られていたとは思わなくて恥ずかしくなった。
「椎名が世話をしているの?」
「…少し、手伝っているだけなんだ。偶々、一つだけ育ちが遅い花を見つけて、折角、綺麗な花を咲かせられるんだから、ちゃんと咲いて欲しくて、毎日、様子を見に行っていたんだ」
僕がそう答えると、新見君は突然僕の頭を撫でた。
「想像通り、本当に優しいんだな」
胸が破裂してしまいそうだった。
撫でられた所が熱い。
僕を知っていてくれただなんて、見ていてくれただなんて。
「でも突然、花火に行こうだなんて悪かったな。話した事もないのに。俺は知っている気でいたから、仲良くなりたいって思って」
「そんな事ない!僕も、新見君の事は知っていたよ。すごく、格好良いし、人気者だし、だから、誘ってもらえて、嬉しかった…」
申し訳なさそうだった新見君は目を丸くし、そして照れた様な表情になった。
「椎名も俺の事知っていてくれたんだな。そんなすごい人間じゃないけれど、嬉しいよ」
見上げる新見君の照れた顔は少し可愛く見えて、もっと好きになった。
「それじゃあ、一緒に花火を見に行くって事で良い?」
「本当に、僕なんかとで、良いの?」
嬉しいのに、まだどこか不安でそんな事を口にする僕に新見君は少し困った様な顔で言ってくれた。
「椎名と行きたいんだよ」
その言葉に思わず泣いてしまいそうだっただなんて、きっと誰にも言えない
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