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旋風
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竜巻の如く、景色を変える。
「サクさん、知ってます?」
大和が、嵩原や高橋と賑やかにしていた夜。
夕方から、既に賑わいを見せる繁華街では、多くのリーマンや若者達が街を埋める。
そして、ネオンがきらめき、キャバクラや飲み屋がそれらを次々飲み込んでいく。
「知ってるって……………………何が」
彼らもまた、その一部。
しっとりとした、モダンなバーの片隅。
特別シートに、見た目はイマドキな若者十数人。
素顔は、この辺りをシマに持つ、とある組の勢いに乗る若手連中。
「親父…………………最近、どっかのマフィアの幹部と会ってるみたいですよ」
「…………………………マフィアの幹部?」
マフィアの幹部。
それを口にする男の、真っ直ぐな視線。
いや、周りに座る若手の誰もが、中心に席を構えるその男に、熱い眼差しを注いでる。
サクさん。
昼間、初対面で大和のスーツに手を入れた勇者、桜井湊である。
水割りグラスを持つ姿も、画になる。
とびきりの男前は、他の客達の視線も自然と集めながら、後輩らしき男の話に耳を傾けた。
「ええ…………………何かここンとこ、田原さんら数人だけ連れてよく出掛けるから、変だなって思ってたんですよ。この前、田原さんつついたら、コッソリ教えてくれました」
「妙な話ですね…………………頭(若頭)のサクさんに、何も言わないなんて……………………」
近くに座る後輩は、分かりやすい位に怪訝顔。
桜井を差し置いて。
ムッとした表情からは、それが見て取れる。
「いや……………あの人は、昔から自分で思った事は、自分でやらなきゃ気が済まない人間だからな……………多分、話がついてから報告してくるつもりだろ」
「でも、サクさんっ…………………今の組が、ここまでデカくなったのは、サクさんの力ですよ!親父も、昔は凄かったのかもしれませんが………………正直、サクさんがいないと組はもちません」
桜井を取り囲む男達は、仲間の言葉に一斉に頷く。
西に、若手No.1片山がいれば、東には、この桜井。
そのくらい、関東では一目置かれている。
ただ、それは数年前までの話。
桜井は、3年ほど海外へ行っていた。
北米やヨーロッパのマフィアと、太いパイプを作る為に、自ら出たのだ。
これからのヤクザは、国内だけではやっていけない。
そう考えたから。
だから、本当の実力は未知数。
自分から派手に動くのが好きでない桜井の力量は、あまり知られていない。
でも、桜井を知る極道者達は、言う。
桜井が本気を出せば、片山とて食われる、と。
「まぁ、そう言うな………………親父の出方を待とう。何が起きても、お前らは俺が守ってやる」
組員に愛される幹部は、伸びる。
桜井が一言発し、笑顔を見せれば、それだけで仲間達の心は掬い取られる。
「サ………………サクさん………………っ」
皆、ウルウルです。
「オーバー、オーバー。逆に、引くし!」
野郎の涙にウケる桜井の笑いが、また場を和ませる。
「あ、それはそうと…………………サクさん、昼間のガキ…………………名前聞いてないんですよね?その辺のヤンキーら探って、調べて差し上げましょうか?」
「え……………………?」
昼間のガキ。
空気が穏やかさを見せた頃、今日桜井と一緒に行動していた男が、思い出した様に声を上げる。
そう言えば、サクさんが気に入っていたよな?
いつも自分達の為に動いてくれる桜井へ、ささやかなお礼を。
そんな後輩なりの思いやり。
「何、昼間のガキって!気になるなぁっ、おい」
「サクさん、ガキに興味持ったんですかァっ」
だが、周りはそうとも限らない。
桜井が調べようと思う、ガキ?
誰だ、ソイツ。
仲間の暴露に、桜井を囲む後輩達は口々に騒ぎだす。
許さねぇ、昼間のガキ!
俺達のサクさんーっ!!
「馬鹿…………………アレは、その辺のヤンキーにはわからねーよ」
後輩の心根に、桜井は思わず苦笑い。
ヤンキー。
ま、確かにヤンキーだけど…………あの風貌は…………。
「え……………………何でです?どう見ても、ヤンキーだったじゃないっすか?」
テーブルに置いた煙草を手に、自分へ微笑みかける桜井を見て、男は不思議顔。
ヤンキーじゃなきゃ、何?
「…………………ヤクザだ………………アレは」
ヤクザ………………?
ヤクザ……………!?
「はぁぁ!?ヤ、ヤクザなんすか!?あいつっ!!だって、まだ高校生位でしたよねっ!?」
仲間達の騒ぎっぷりより、一際大きな叫び声。
めちゃめちゃ若く見えましたけどぉぉ…………っ!?
ええ、若いんです………………実際。
17歳ですから。
「もーっ、何なんだよ!ヤンキーとか、ヤクザとかっ……………………気になるだろ!」
「いやいや、だから…………………サクさんが、昼間会ったガキを気に入っててさ………………」
仲間達に囃し立てられ、男はワタワタと答えながらも、頭はプチパニック。
全く、気付かなかった…………………。
「……………………それも、なかなかの組織だと思うぜ。付いていた男が、相当なやり手に見えたからな…………あんだけの器は、ちんけな組にはまずいない。そうだな………………関西弁を喋っていたから、関西人。そして、関西から関東進出して来た、有名な組織…………白洲会か、もしくは竜童会…………」
「はっ………………白洲会か、竜童会ぃぃ!?」
どちらも、破格の組織。
大物過ぎて、後輩達は腰が抜けそう。
「帰って来た時に、親父がチラッと言ってたの忘れてたわ……………………竜童会の若頭が、随分若いのに交代したらしいって」
「わ…………………わ、若頭………………っ!!」
興味がなかったから、流してた。
随分若いのに………………。
『若ぁ……………………っ!!』
自分が近付いただけで、あそこまで側近が顔色を変える。
しかも、あいつは自分がヤクザだと気付いた。
それがわかる、素質。
「クス…………………………若過ぎるだろ………………」
煙草を咥える口元も、つい緩む。
面白い。
早く、再会したくなってきた。
サァァァァァ………………………
バスルームに上がる、湯気。
勢いよく飛び出すシャワーに打たれ、大和は一日の疲れを洗い流す様に身体を濡らす。
「…………………………ハァ」
長い一日が、終わる。
あれから、夕飯を巡って、父親と高橋の笑える攻防は続いた。
まるで、お父ちゃんとお母ちゃん。
尻に敷かれ気味の父親が似合い過ぎて、ついムービーで撮ってしまった。
「………………………今度、あれネタにいびったろ」
また、可愛い父親が見れるかな?
小悪魔は、ニョキニョキ頭角を現す。
パシャ…………………………
流れる湯に足を滑らせ、大和は曇った鏡を手で拭う。
「カイロ………………………良かったな」
鏡に映る、軽く割れた腹筋と締まったウエスト。
意外とよくもった温もりは、大和の痛む腰を長い間癒してくれた。
たったあれだけの事だが、劇的に変わるなんて。
「もう手離せんわ…………………ええもん貰うた…………」
ですね、これからの夜の為に。
お互い、激しい質なんで。
アッチ。
「ヤベ…………………要らん事考えてたら、デカくなってきた」
父親の身体を思い浮かべると反応する、ご立派な下半身。
大和は顔を赤らめ、慌ててスポンジを取ると、ボディソープを泡立てた。
流れ落ちる泡から覗く、輝く刺青。
そして、髪から滴り落ちる水滴が、大和の綺麗な顔を通り、長い手足からなる美しい身体へと当たる。
父親から、大和は素晴らしいものを受け継いだ。
それは、美しいヤクザの代名詞と謳われ続けた嵩原だからこそ、引き継いでやれるもの。
親とは、本当に感謝すべき存在である。
ガラッ………………………
「入るでー、大和」
感謝すべき存在、乱入。
「え?ああ…………………親父も入るん……………」
大和は父親の声に応えながら、いつもの様に身体を洗う。
いつもの様に身体を………………………。
「かっっ……………………!?」
バシャバシャ…………………………
水しぶきを上げ、咄嗟に後退りする、大和。
「おっ…………親父ぃ!!な、な、何してんねんっ!」
開いたドアに湯気が吸い取られ、景色が良くなるバスルーム。
大和の視界は、嫌でも父親のエロ肉体に塞がれる。
目のやり場に、困ります。
見たい所があり過ぎて。
「あ?何って…………………たまには一緒に入ろう思うて、風呂」
何でぇぇぇ……………っ!!!
ベッドの上では見慣れていても、お風呂って何か恥ずかしい。
平然と答える父親の前で、大和の顔は、耳まで真っ赤っか。
「ちょっ……………ちょっと、一緒って…………一緒って言われても、風呂なんて………俺、恥ずか………………」
と、焦る大和へ伸びる、力強い腕。
「親………………っ………」
大和の身体は、あっという間に厚い胸板へ吸い込まれ、父親の肌を泡だらけにした。
「腰、痛いんやろ?今日は何もせんから、俺が身体洗うの手伝ったるわ」
一気にシャワーの湯に濡れていく、綺麗な父親の色っぽい様。
相変わらず、エロいオヤジやな………………。
濡れると、こんなにもいやらしく見えるんだ。
今まで見なかったの、勿体無かったな。
大和は、抱きしめられた隙間から僅かに顔をズラし、その艶やかな表情を目に焼き付けようと見つめた。
「き……………………気付いてたん?」
「ずっと腰を庇って動いてたし、抱きしめとったらわかるわ……………………俺を見くびんなや」
「親父………………………」
さすが、お父ちゃん。
嬉しい。
些細な事に気付いてもらえる。
必然的に、大和の口はニヤついた。
しかも、父親を見上げる大和に微笑みかけ、然り気無く耳の辺りへ優しいキス。
キュ……………………ン。
心はもう、乙女です。
「すまんかったな…………………俺が、求め過ぎた」
「あ…………………んっ………………親父ぃ」
高橋の言う通り。
嵩原の恋人は、幸せだと思う。(自分だけど)
格好良くて、強くて、溢れる愛。
どれもが最高で、ベタ惚れ惚れ。
自分の親をこんなに好きになるって、普通じゃない。
それでも、想いは膨らむ一方。
父親のたくましい肉体にしがみつき、大和はその魅力に息衝く暇も忘れる。
「そ…………………そないな事………………俺かて、親父が欲しかったんや………………謝らんで…………」
「大和………………………」
まさに、揺れる身体。
ほんの少し、唇が当たるだけで、感じちゃう。
父親の唇の感触に、大和の身体は素直に応答する。
この唇が、物凄くいやらしくて気持ちいいって、もう身体は知っているのだ。
「なぁ………………どこから、洗う?屈むの辛いやろうから、何でも言いや 」
「どこからって……………な………何か、やらしいな………俺、アソコデカなってきたし………………」
妄想していた身体が、目の前に現れる。
エロい以外の何物でもない。
抑えかけてた本能も、当たり前の様にセーブが利かない。
格好悪…………………………。
大和は照れる表情を隠そうと、自分を包んでくれる父親の首筋へ顔を埋めた。
「ほな……………………そこから、満足させたる」
自分の額へ口付けをし、囁く父親の声。
そこから、満足させた…………る?
「………………………え」
「俺に任し…………………腰に、負担はかけへんから」
顔を上げると、父親は大和へ笑顔を見せた。
「お前がして欲しい事、何でもしてやる」
何でも。
流れる水滴が、父親の唇をやたらと濡らして、紅い色を濃くさせる。
紅い。
「親父…………………っ」
大和は、たまらず自ら唇を重ねにいった。
耐えられない。
耐えられる訳がない。
サァァァァァ………………………
シャワーの音さえ、かき消されてしまう。
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