アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
冷酷男とヤクザより恐い堅気
-
見たくないもの程、見たくなる。
でも、本当に見たくないものって、あるんです。
「あ…………………そう言えば…………………」
中国マフィアの絡んだ話が持ち上がり、嵩原は関西へ帰る事を決め、安道が劉組織の次期首領ヤンに会っていた事実を知る。
さすがの幹部達も、身の引き締まる厳しい未来を予感したが、側にいるのは嵩原と安道。
この二人の笑顔に、心強さを胸に抱いた。
そして、その場にいた誰もが、とりあえず話はついた……………そんな空気を漂わせ始めた時、事務局長の榊が何かを思い出したように、嵩原へ目を向ける。
「何や…………………俺が、どないかしたんか?」
嵩原はベンチの横に置かれた灰皿へ、吸っていた煙草を捨て、立ち上がった。
関西へ帰ると決めたからには、あとは動くだけ。
その為の準備を始めようと考えた。
「はい…………………それが、あの………」
「あ?歯切れ悪いな…………………サッと言えや」
普段なら、自分の意見をハッキリ口にする榊の、珍しく躊躇う姿に、嵩原は首を傾げる。
マフィアの話以上に、言いづらい話でもあるのか?
周りも、不思議そうに榊を見つめた。
「いや………………こちらへ来る少し前に、繁華街歩いてましたら、偶然上地に会いまして……………………」
上地。
え……………………上地!?
そりゃ、言いづらい。
錦戸達は、またえらい名前が出たと、静かに目を閉じた。
辰見組にマフィアに、シメ上地。
もう、何でも来やがれ……………………そう言う気分。
「は………………………上地?」
しかし、嵩原はそれを直に受ける側。
何でも来やがれだけでは、片付けられません。
これでもかのオンパレードに、最早呆れ果てる。
どんだけ、話題に事欠かんねん…………………。
忙しいにも程がある。
「上地が何やて?何か、言われたんか?」
一度立った腰をまた下ろし、嵩原は再び聞く態勢。
これでも、組長。
聞くしかない。
「はぁ…………………その……………親父は、関西へ帰って来るんか、と。もし帰ってけえへんなら、直接連絡くれって…………………なんや、親父の耳に入れときたい話があるみたいに、言うてました」
嵩原の耳に入れときたい話。
「上地もか……………………っ」
思わず膝を叩き、嵩原はいない上地へ、突っ込みを入れる。
はい………………上地も、です。
「すみません…………………いつもやったら、軽く流したるんですけど………………えらい真剣な顔で言いよるんで、無視も出来ひんで………………」
「まあ…………………大概、真顔やけどな………」
何せ、冷酷上地。
笑顔なんか、見た事がない。
自分に、以外は。
嵩原は、自分が上地に愛されている事を思い浮かべながら、溜め息を漏らす。
また迫られる……………て、雰囲気でもないな…………。
「わかった…………………向こう戻ったら、一回連絡入れてみるわ。上地がお前に声かける言うたら、よっぽどやろ…………………」
「……………………ありがとうございます」
嵩原の言葉に、榊はホッとした様に頭を下げた。
こうして、再度持ち上がった面倒な話は、一旦丸く収まったと、皆は胸を撫で下ろ………………。
「ちょい、待てや………………………竜也」
せなかった。
「京…………………………」
ええ、安道を除いては。
「上地て………………白洲会の、あの上地か?」
「ああ……………………そうやけど……………なに……」
「確か、あいつ………………昔から、お前の事妙に意識しとったでなァ?」
「まぁ、そりゃ…………………竜童会と白洲会は、先々代から因縁の間柄やからな………………仲良くとは、いかへんやろ」
本当は、最近仲良くいけてますが。
安道が絡むとややこしそうなので、嵩原はあえて伏せて話す。
だって、上地と安道。
絶対に、合わなそう。
「……………………俺も行く」
…………………………はい!?
当然だが、この場にいた男達、一斉に我が耳を疑う。
俺も行く…………………?
「上地が、何の話をしたいんか……………俺も行って、聞くわ」
安道は、呆気に取られる嵩原達を見渡し、無謀な策に出る。
何だろう、なんか引っ掛かる。
嵩原を上地にすんなり会わすのに、どこか胸騒ぎ。
嫌なんです、とにかく。
「……………………えーと、言うとる意味が、ようわからんのやけどな……………………お前、竜童会やったか?」
「アホ言え、俺は立派な堅気じゃ」
「アホ言うとんのは、お前や。堅気のお前が、何しに付いて来んねん………………関東で仕事あんねやろ?黙って、それしとれ」
頼むから、大人しくしろ。
そう願いを込めて、嵩原は安道をあしらった。
「なんでやっ……………ええやないか。俺は、まだまともに上地に会うた事ない……………………冷酷上地、どんな男か見てみたいわ」
周りの心配を他所に、安道はしれっと自分の意志を突き通す気満々である。
ピキ………………………
「…………………っざけんなっ、見んでええわっ!お前と上地のご対面なんぞ、誰が面倒見んねんっ!!もう、氷河期並みに凍り付くわっ………怖いもの見たさも、そこまでいくと見とうあるかァっ!!」
嵩原、ついにキレる。
冷酷上地vsヤクザより恐い堅気安道。
仲睦まじいなんて、ある訳がないだろう。
ましてや、それに挟まれる、自分。
益々、ゾッとする。
平然と構える安道に向かって、嵩原は苛立ちをぶつけた。
…………………………ごもっとも。
口には出せないが、錦戸以下全員、首を縦に振る。
いつもは嵩原に振り回されてる組員達も、こればかりは嵩原の味方です。
「京……………………お前は、こっちで大和を頼むわ」
嫌だけど。
「………………………え?」
「マフィアが、何考えとるかわからん………………何かあった時、大和の力になったってくれ」
嫌だけど…………………!
仕方なく、嵩原は大和で心友を釣る。
「…………………そうか…………………そら、しゃーないな」
嵩原から目を逸らす、安道の嬉しそうな顔。
大和の力。
悪くない……………………♪
「はぁっ……………どっちがヤクザか、わからんわ」
ヤクザより恐い堅気。
ややこしさ極まりない。
ただ、なんとか話は収まった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 590