アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
終止符を(やや★)
-
それを終わらせるのは、誰か。
「親父ぃ……………っ!!待ってやァ!!俺より、高橋を………………高橋を、助けてくれぇっ!!」
殺気立つ部屋に響く、大和の必死の叫び。
目の前にいるのは、父親と安道。
もう、大丈夫。
この二人が来たなら、何も心配はいらない。
そう思った大和は、用心棒達の腕の中でもがきながら、懸命に高橋への助けを訴えた。
自分なんかよりも、高橋を。
早く、高橋を助けて欲しい………………!!
「高橋………………………」
大和に言われ、嵩原は眉をひそめる。
そうだ、高橋。
高橋が、この場にいないじゃないか。
二人共、ここに来ていると思っていた嵩原は、直ぐに辺りを見渡す。
「奥におんねんっ!俺を庇う為に、黒河に奥の部屋へ連れて行かれたんや………っ!!高橋の身体……………黒河に………………っ」
高橋の身体。
そう声を張り上げる大和の後ろにチラつく、パソコンの画像。
「高……………………………」
それを目にした嵩原の表情は、みるみる険しくなった。
暗がりで遠目にはわかりにくいが、ベッドの上でこちらの音に驚いている風の黒河と、その後ろで服を乱され寝かされた高橋の姿が、ありありと映っている。
なんて事だろう。
10年以上も前、二度とさせまいと誓った光景が、自分の面前に映る。
二度と……………………………。
「……………………クソが………………っ」
ワナワナと怒りが込み上げるとは、この事だ。
ずっと、これに悩まされて来た高橋の心を、黒河はまたえぐり返している。
嵩原の目は、一気に深く鋭利な光を帯びた。
「京………………………っ!」
「何も言わんでええ……………早よ、行ったれえ。こないな雑魚、俺だけで充分や」
それを聞くや否や、嵩原は走り出した。
と、同時に構える安道。
「大和っ………………目一杯頭下げよ。そいつら、ブッ飛ばしたるわァ………………!!」
「ほざけぇっ!!……………ヤクザがァ」
安道の言葉に苛立った用心棒達は、大和を掴んだまま、拳銃を安道へ向けんと腕を振る。
「…………………アホ言え、俺はヤクザちゃうわ」
嵩原が大和達の脇を通り抜けた瞬間、安道の身体もまたスピードに乗る。
「京之介…………………っ」
それを見た大和は、自分の身体を力の限り下へと屈めた。
「やべぇ…………………マジや…………………」
マジな安道ほど、恐いものはない。
普段でも恐いのだから、そりゃ恐い。
自分もぶっ飛ばされないよう、大和は言われた通り頭を低くして、我が身を守るのみ。
そして、大和が頭を下げた途端、安道は飛び上がり、身体を一捻り。
「堅気じゃ、ボケェェェ……………ッ!!」
バコオォォォ…………………ンッ!!
「あがぁ……………………っ」
瓦の二枚抜き…………………ならぬ、人体の二人抜き。
安道の回し蹴り、用心棒達の頭部へ見事に炸裂。
真っ先に蹴りを食らわし、捉えた一人の頭を、まるで武器の様に、そのまま勢いに乗って、隣の男の顔面へとメリ込ませた。
「ぅわ………………………」
緩んだ手をすり抜け、床スレスレを膝まづきながら慌てて飛び出す、大和。
上部では、血しぶきが舞い、大男が二人も膝から崩れる寸前。
自分を下敷きにでもなろうものなら、本当に馬鹿である。
「大和………………………っ」
つかさず安道は、下敷きを回避した大和の腕を掴んで、その身体を引っ張り上げた。
ガッターンッ……………ガタガタッ…………………
男達は、前に大和が気絶させた男の近くへ、テーブルやソファを派手に倒して、落ちていった。
「も…………………何なん、この36歳コンビは…………」
安道の腕にしがみつき、大和はホッとした様に息を漏らす。
「クス………………最強やろ?これで俺もヤクザやったら、竜童はもっと強うなるでぇ……………」
「いや……………………恐ろし過ぎやろ…………………」
誠に。
でも、自分を包む安道の温もりに、とても安心する。
いつもは厳しいのに、こんな時は優しく抱きしめ、頭を撫でてくれる。
凄く恐いけど、凄く優しい。
安道のこう言う所、大好きだ。
黒河みたいな非情な人間を目の当たりにした今だから、余計に人の温もりが有り難く思えた。
黒河みたいな………………………。
「そうや…………………高橋っ!高橋を………………」
大和は、ようやく自由になった身体で、高橋を助けてやらなければと、急いで父親が走って行ったドアを振り返る。
当たり前だが、ドアはもう、閉めきられている。
一体向こうで、何が起きているのか………………。
「行ったら、あかん」
「え………………………」
高橋の元へ行こうとする大和の腕を、即座に引き止める、安道の手。
「あかんて………………何でやっ、京……………」
「さっきの………………パソコンを見た竜也の目ぇ………マジや」
「は…………………いや、そりゃ………………」
高橋があんな目に遇ったら、父親だって腹は立つ。
怒って当然の話……………………。
「ただのマジやない……………………久々に見る、マジん中のマジやった。ああ言う時の竜也には、手ぇ付けん方がええ………………………後処理は俺がしたるから、お前は近付くな。離れて、待っとこ」
「京之介………………………」
後処理は……………………。
後処理。
後処理………………………て、何や。
自分の腕をグッと握りしめる安道の力に、大和は見上げた顔を動かせなくなった。
マジん中のマジ。
今までだって、キレた父親は見た事がある。
それでも、マジん中のマジ………………?
「…………………………親父」
どんなに愛し合っても、知らない顔はある。
高橋を救い出す為に動いた父親の、顔。
安道の言葉は、大和の心にまだ見ぬ父親を作り出す。
ドカァァァ…………ン…………
閉めきられた、冷たい寝室。
安道が大和を助けた、数分前。
汚ない欲にまみれたベッドの上では、黒河が涎を垂らし、後方で起きた激しい音に肝を冷やす。
「な…………………何やっ!?何の音や、今のはっ」
もう、下半身はガチガチに固くなり、古びたスラックスは盛り上がる。
70を越えても、毎晩の様に高橋を抱いていた性欲は、衰えを知らない。
早く高橋の中へ、このブツをブチ込んでやりたいのに、何の邪魔か?
黒河は、逸る気持ちで後ろを睨み付ける。
「っ…………ハァ………………隣……………」
ずり落ちたシャツから、筋肉質な悩ましい肩をさらし、高橋も僅かに身を起こす。
隣の部屋で、何か?
「まさか…………………若………………」
丁度、それが嵩原達がドアを蹴破った音とは知らない高橋は、大和に何かあったのではないかと不安になる。
ギシ……………………………
「若っ…………………………」
震える声。
高橋はベッドの上を、四つん這いになりながら、扉の方へ身体を進めた。
「待て、高橋ぃっ!今、お前の身体はワシのやぞ!勝手な真似すな…………………」
「黒河………………………っ」
昔と何も変わらない。
いつまで経とうと、高橋は自分のモノ。
自分の横を過ぎようとする高橋の腕を掴み、黒河は血走った目で見据えた。
「どうせガキが暴れたんを、用心棒らが押さえ付けたんやろ…………………クク……………アホなガキじゃ」
「ふざけるなっ!若には、手ぇ出さへん約束やろ!若に何かしたら、俺かて黙ってへんぞ…………っ」
怒りに満ちる、高橋の表情。
これで、大和にあれ以上の傷が付いたら……………………自分は、どこまで疫病神なんだ。
自らの過去のせいで、嵩原だけでなく、大和にまでも負担をかけるなんて。
俺は、心底………………………。
「………………………最低や」
シーツを握り締める手に、血管が浮き出る程力が入る。
苦しくて、哀しくて、どうにもならない。
「ひゃははは………………そないな顔も最高やのォ………ええ男は、どんな顔も見物やわ………………さぁさぁ、続きをしようやないか?の、高橋…………………お前の身体を、もっとしゃぶらせてくれや」
そう言うと、黒河は高橋の身体を、再び撫で回し始めた。
ヤクザの道を、上り詰めた男の堕ちた姿は、格別にそそられる。
美しく、憂いを帯びる、色男。
「高橋………………………ほら、早ように……………こっちへ来んか………………………」
「黒………………………」
唇を噛み締め、俯く高橋の素肌へ手を滑らせ、黒河はニタニタと笑い出す。
「お前は、一生ワシが飼うてやるんや…………………一生、手離しはせえ………………………」
バン………………………ッ!!
突如、射し込む光。
黒河の卑猥で下品な言葉を遮る様に、薄暗い寝室に隣の部屋の明かりが入り込む。
「そいつから、手ぇ離せ………………………」
冷たい空気をかき消す、怒りに燃えた想い。
「ひ…………………っ……………」
逆光から浮かび上がる姿に、振り向いた黒河は恐怖のあまり、悲鳴を上げた。
「ウチの大事な高橋から、離れろ言うとんや……………黒河」
ウチの大事な高橋。
それを言える、揺るぎなき強さ。
「は……………………ぁ…………………」
高橋は、思わず口を押さえ、目を潤ませる。
「お………………親…………………親父ぃ……………っ」
涙が、瞬く間に頬を伝う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
65 / 590