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徹夜明けのお泊り
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一目惚れをした。
声を聞くことも、触れることも出来ない片思いをした。
人生で初めての恋人が出来た。
偽りの恋愛をした。
好きな人の幸せを祈った。
独りになった。
”俺はお前を絶対に幸せにしてみせる。だから、覚悟しとけよ?”
そんなの、どうせ最初だけだ。俺の本心を知ったら呆れるし、面倒くさいやつだと思って捨てるんだ。最初から捨てられる事を分かってるから、俺はもう恋なんてしたくない。幸せを味わった後で、不幸に突き落とされる苦しさなんてもう二度と味わいたくない。
好かれたいと願った。依存して欲しいと、縋り付いて欲しいと願った。だけど、俺は結局都合の良い存在でしかなかった。泣きたい時、甘えたい時、居場所がない時に縋りり存在。俺自身、それで良いとさえ思った。俺を必要としてくれるなら。それが、偽りの恋愛感情だったとしても。そう思っていたのに、知らぬ間に俺の心には亀裂が入ってボロボロと零れ落ちた。最後まで耐えることが出来なかった。
彼は、許嫁と婚約した。俺は、彼の結婚式に呼ばれた。彼の元恋人ではなく、彼の後輩として。
白いふわりとした綺麗なドレス。それを纏ったのは、可愛らしい女性だった。人生最大のイベント。彼女は緊張していたんだろう。ぎこちない足取りで、バージンロードを歩いていた。隣には彼女の父が、泣きそうにな顔をしながら。何歩か歩いたところで、彼女の手が彼女の父から彼の手に移った瞬間、彼女と彼は恥ずかしそうに、けれど幸せそうに微笑んだ。
何故、彼は俺を呼んだのだろうか。俺にその微笑みを、誓いのキスを見せつけたんだろうか。まだ、俺は貴方のことが好きだったのに。貴方の幸せを願って、俺は自分から貴方を手放した。でも、まだ...俺は貴方のことが好きだった。
披露宴にも招待されていた。けれど、俺はこれ以上こんな醜い感情を持ったまま、あの場所に居ることは出来ないと思い、結婚式の途中に行き、結婚式直後にその場から逃げ出した。もう、見たくなかった。俺以外の人と幸せそうな、愛おしそうな表情をする彼の姿を。目に焼き付けたくなかった。
”また1人で泣いてんのか。”
どうして、いつもタイミング悪く現れるんですか。この部屋のどこかに隠しカメラでもつけているんですか。
”好きな奴が助けを求める時に現れるのが、救世主だろ。”
”助けなんて、求めてないです。”
”お前が素直じゃない事ぐらい十分承知の上だ。それに、誰かに助けを求めるのが苦手だってのも超知の上。”
高そうなスーツ。俺が汚すのは、彼が俺を捨ててこの家から出て行った時とその日とで2回目だった。
誰かに頼るのが嫌いなのに、それを崩される。好きでもないのに、抱きしめられて、頭を撫でられて、優しい言葉をかけ続けられた。何故俺なんだろうと、何度思ったことか。こうやって、優しく、俺でもわかるぐらい愛おしそうに接してくれる度に思ってしまう。俺にそんな風に接してもメリットはないのに。デメリットなら沢山ある。優しくされても、返せるものは何もないというのに。
「生きてるかー。」
「...生きてます。」
「お前、死んだように寝るからさ。牛丼食いに行くぞ。」
「...1人で行ってください。徹夜明けで眠いんです。」
急遽、相手側のミスで提出日が早くなり、徹夜しなければいけなくなった。徹夜しても間に合うかギリギリで、三浦さんも手伝ってくれたお陰で、無事間に合うことが出来た。だから、三浦さんも徹夜明け。この1週間、まともに寝れてない状態。なのに、牛丼食いに行く?今、そんな重い物食べたら吐く。
そんな俺の言葉を無視して、2人しか残ってない社内。三浦さんは俺の腕を引いて、無理やり立たされ連れて行かれる。徹夜明けだとういうのに、三浦さんは嬉しそうだ。この人には借りがたくさんあるから仕方ないけど。何かあっさりしたメニューがあればいいな。
「徹夜明けの睡眠不足の人が運転する車、乗りたくないです。」
「心配すんなって。案外、眠くないから。」
さっき、思いっきり欠伸してたのは誰だ。
「あー、わかったって。近くの牛丼屋にしよう。そこだったら、歩いて行けるし帰りは地下鉄に乗ればいい。そして、俺の家に泊まればいい。」
「最後のは聞かなかった事にしておきます。」
「それが目的なのに。」
腕を伸ばし、隣で三浦さんは伸びをする。やっぱり、眠たかったんじゃん。デスクワークの仕事なんて、数時間も同じ体勢で座ってると体が固まる。骨がなるぐらい。でも、その後で伸びをしたりするのは何気に気持ちいい。
三浦さんに連れて行かれたのは、安くて美味しい牛丼のチェーン店。まだ朝の6時だからか、店の中にはお客さん1人もいなくて貸切状態。そこに、俺と三浦さんは入って行きカウンター席に座る。
「牛丼、大盛りで。」
「え、大盛り食べるんですか。」
「男は黙って大盛りだろ。」
「じゃ、俺は焼き魚定食で。」
「牛丼大盛りにしろよ。だかr、そんなにガリガリなんだろ。」
「朝から牛丼大盛り食べるなんて、死ぬようなもんです。」
まず、朝の6時から牛丼を食べるというだけで驚きなのに。大盛りまで行くか。この人の胃袋はどうなってるんだ。ほら、店員さんも苦笑いしてる。
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