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15献身的な太宰(中也)
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「中也、先ず髪から洗うよ〜」
太宰は適当にシャンプーを手に垂らして、良く泡立てる。
鼻歌交じりに手を擦り合わせて泡を作る太宰を、目の前の
曇った鏡越しに薄らと見る。
そして、同時に写る自分の身体にも何度溜息をつきそうになったことか。
「中也、髪、洗うよ?」
「あ?あぁ」
少しぼーっとしかけていた俺を確認する様に太宰は俺を覗き込んだ。
俺の返事を受けた太宰は早速、泡立てたシャンプーと髪を擦り合わせていく。
あー……気持ちいい……
柔らかく動く指が、頭皮を解すかのように感じる。
他人に髪を洗ってもらう事がこんなにも気持ちの良い事だったとは……。
「中也」
「ん……?ぁ」
チャプン……
広い浴室に、水の音が広がる。
後ろから反響する太宰の声に目を覚ました。
「あはは。やっと起きた」
「ぁ……?寝てた……?」
何だかまだ眠ぃ……。
右手でゴシゴシと目を擦る。パシャンと、水持ち上げる音がした。
あ、俺浴槽に入ってんのか…。
道理で全身温かいと思っ────────
「太宰?」
俺は浴槽に入ってんのに、早急から聞こえている太宰の声は直ぐ後ろからだ。
背中にピッタリと感じる、水では無い何か。
後ろから抱かれるように回された腕の様なもの。
耳元で囁く太宰の声。
「中也髪洗ってたら寝ちゃうんだもん」
クスクスっと、太宰は俺の背中に寄りかかる。
「ちょ、手前何勝手にやってんだ!?」
俺は太宰から逃げようとするも、太宰は肩を抱く力を弱めることは無い。
「放せ…った……ぅ……」
肋の辺りに痛みが走り、俺は力なく太宰にもたれかかる。
「中也、大丈夫?まだ痛む?」
太宰は何故か慌てたように俺をゆっくりと自分の方へ引き寄せる。
「何だよ?心配でもしてんのか」
一瞬の痛みは其れ程大慌てするようなものでは無い。
寧ろ太宰なら笑うと思っていた。
俺は太宰をからかう様にその言葉を発したのだが───
「当たり前じゃないか。他に痛いところは?」
偉く真剣な太宰の顔は、本当に心配している色が出ている。
太宰の癖に何なんだ……?
慣れない太宰の『心配』は調子が狂う。
これ以上からかう気も起きず、俺は太宰から顔を逸らした。
というか、昨日から太宰は俺に随分と尽くしているように思える。
俺の言う事をすんなりと受け入れて、普段なら絶対しない様な、飯を作ったり、俺に食わせたり、終いには髪まで洗って風呂に入れる。
恥じる俺をからかうと言うよりは、『気遣い』が見られる。
「……。」
太宰が俺の心配……。
太宰に優しくされるのを『悪くない』と思ってしまう自分を隠すために、俺は水面ギリギリまで俯いた。
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