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太宰治誕生日(本文関係なし)
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……彼奴は何が欲しいんだろう……
俺は自分の部屋のベッドに胡座をかいて悩む。
太宰如きに悩むのは癪だが、禄なものを用意して笑われたくもねぇ。
自殺用具は意味無いし。
本は芥川が渡したし。
酒は好きだが彼奴は最近飲み過ぎだ。
蟹は用意してやれなくもねぇが消費モンだ。
「…………。」
俺はワイシャツにベスト姿で街へ行くことにした。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
極たまに行く、装飾品の店に来た。
俺のチョーカーも此処で買ったりしている。
「あぁ、アンタですか。いらっしゃい」
横浜の街には少し似合わない、茶色の古めかしい店だ。
商品窓すら無く、一見、なんの店かわからない。
扉を開くと共にベルが鳴った店に入ると、俺の姿を見るなり声をかけるのは若い20代の男店主。
「また新しいチョーカーですか?」
「いや、誕生日プレゼント様に何かと思って…」
「お、アンタ遂に女が出来たんですか」
「馬鹿言え。女には困ってねぇよ。その、なんだ……相棒に」
彼奴とは『双黒』としてバディを組んでいるが、改めて相棒と示すのは照れ臭い。
俺は首の後ろを搔いて誤魔化した。
「…あー、成程。それじゃあ何をお渡しに?」
「……何がいいと思う……」
「えー、俺アンタの相棒知らねぇっすよ」
男店主はレジカウンターから出てきて、俺の見ている装飾品の横に立つ。
机に並べられているのはネックレスやチョーカーだ。
あ、これ欲しい……って、俺のじゃねーつの。
「その人の雰囲気とか、イメージってありますか?」
「雰囲気……。……飄々としてて頭がウゼェぐらいにキレて、スカしてていけ好かねぇっっ!!」
「何でバディ組んでんすか」
いつの間にか太宰の悪口に発展していたことを、男店主にツッコまれ、我に返る。
そして再び太宰への贈り物に対して頭を捻る。
「もうアンタが付けてるチョーカーとかでいいんじゃないですか?之とか色違いの同じ型ですし」
男店主はスルリと一つのチョーカーを手に取った。
俺の黒いチョーカーと色違いの茶色のチョーカー。
飾り気がなく、寧ろ犬の首輪よりお淑やかだ。
「……付けるかな……」
「え、付けてもらえそうにないんですか?」
ポツリと零した独り言に、男店主は心底驚いた顔をした。
「……誕生日プレゼントとか、必要なもの以外塵箱に捨てるような奴なんだよ……。」
俺のプレゼントも捨てられないだろうか。
要らないと言われないだろうか。
付けては……くれないのではないか……。
段々、心配に心が沈み始めてきた。
そう思うと、何も渡せない気がして────
「あ、なんか前にもアンタみたいに悩む人が来たよ」
男店主は『似てるわ〜』と言いながら、記憶を呼び起こしてるようだ。
「身長が高めで、細身でスラーって感じの人でさ。気障な言葉が良く似合う野郎だったよ。其奴も誰かの誕生日の為に物を探してたから、その姿がアンタと被ったんだ」
「……俺は背が高くなくて、スラーっともしてねぇってか?殺すぞ」
「ちげえっつの」
カランコロン
店のベルがまた鳴った
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