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太宰治誕生日(本文関係なし)
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「いらっしゃい。…あ、アンタこの間の」
「やぁ。以前はお世話になったね。今度は私の相棒がお邪魔しているようだね?」
気障に扉の柱にもたれかかり、ニコニコと笑うのは紛れもない、俺の頭を悩ませている根元だった。
「手前、なんで此処にっ」
「相棒?ってことは此の兄ちゃんがアンタの相棒なのか」
「そうだよ。中也はなんでこんな所にいるんだい?」
扉を閉めて、スタスタと床板を擦り歩き、俺の前までくると、何時ものように笑った。
「じゃあ今日が誕生日の相棒ってのは此奴か。相棒だと趣味まで似るのか?」
「馬鹿言え。此処は俺が行き付けなだけで此奴は──」
「そうそう〜。私も中也のセンスは死んでも似せる気ないよ」
「黙れ糞太宰」
糞っ、なんでこう、人が悩んでる時に核心が来るんだ!!
余計選びにくい……。
「……でも、こういう物は貰いでもしないと付けないかな?」
太宰は手短なチョーカーを手に取り、猫の首輪を合わせるみたいに首の前で合わせた。
「似合う?」
「良いのは物であって手前じゃねぇから」
「アンタ、もうこれでいいんじゃないですか?誕生ムグッ」
言うな馬鹿野郎!!
太宰のための誕生日プレゼント選びなんて知られたら何を言われるか────
「中也、私、誕生日プレゼントはこのチョーカーがいいな」
「んっ、」
いきなり、太宰が指を俺の巻いているチョーカーに通し、グッと自分の顔の方へ近づけた。
少し息苦しくなり、顔を歪めるが、その視界に映るのは何時もの飄々としたムカつくかとだけだった。
「っ、止めろ、こっちのでいいだろうが」
太宰がさっき持ったチョーカーを太宰の目に突き付ける。
「中也のが欲しい。中也がこっちの茶色のを付ければいいじゃないか」
「俺は之が好きなんだよ」
「ねぇ君。中也のと同じのってないの?」
「黒の方が人気でもう在庫切らしてるんですよ。」
「ちゅーやー私ぃ、これがぁ、ほしいなぁ〜」
「ぐえっ、おま、やめろっ、う、」
太宰は躊躇なく、チョーカーを引っ張ったりしている。
ぶっ殺すぞっっ!!!!
「アンタもいい加減折れたらどうだよ。今なら無料で包んでやんよ」
此奴っ、営業モードになりやがってっっ!!!!
俺は楽しそうに笑う男店主を睨みつけた。
もういいっ!!これでいい!!
「お、毎度あり〜」
左手に握っていたチョーカーを男店主に押し付けて、太宰の指をチョーカーから外した。
「手前は何時までも苦しいんだよ!!」
「中也、本当に私に買うためにこの店に来てくれたのかい?」
「なっ、いや、違っ、…………、俺は先に外に出てるから終わったら呼びやがれ!!!!」
俺は店の中の雰囲気に居ても立ってもいられず、勢いよく扉を占めて店を出た。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「済まないねぇ。うちの相棒が」
「いえいえ。お陰で面白いもんが見れましたし。」
男店主は手馴れたてさばきでプレゼントを包んで私に渡してきた。
「ありがとう。じゃあ」
私はそれを受け取ってスグに身を翻すと、男店主はその背中に声をかけてきた。
「あの人、あんたが何を貰えば喜ぶのか本気に考えてたぞ。捨てんなよ」
「!!……捨てないよ。牽制でもあるからね」
立派に包まれたプレゼント箱にキスを落として店を後にする。
中也がチョーカーを私に贈ったのは、多分、きっと、之を私が首に巻いている限りは『自殺をしない』という宣言にして欲しかったからの様に思えた。
けど、
中也と同じものを付けるなんて、無言で『私の物宣言』してるみたいでなんだか嬉し────
「おい太宰。」
「ん?」
「其れを付けるからには俺のもんだって事だからな。覚えとけよ」
下からキッと睨みあげてくる中也は、どうやら私と同じことを考えていたらしい。
一瞬私は目をぱちくりさせて、まじまじと中也の顔を見た。
普段の中也からは考えられなかったからだ。
また私をからかって────
『帰るぞ』と声をかけた後ろ姿の中也の耳は真っ赤になっていたから、そんな思いも吹き飛んだ。
私の誕生日に、私の好きな人が、私の事で頭を一杯にしていたかと思うと、堪らなく口元がにやけそうになる。
「中也、ありがとう」
相棒には聞こえない声で幸せを噛み締めた。
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