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24標的
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拠点に戻ると、中也は幾分か動けるようになっていた。
「おい、後は自分で歩く」
多分中也は治療室に行くのだろう。
前にも言っていたけれど、男達に受けた傷を、今回のミッションの傷と偽って治療して貰う筈だ。
「何なら治療室迄私を使えばいいのに」
「煩ぇ。腕退けろ」
組んでいた肩を解き、中也を立たせてやる。大丈夫そうだ。
「手前は報告書でも書いておけ」
そう言って、中也は治療室の在る東棟へ歩いていった。
さて、私は安吾でもからかいに行くかな────
一つ向こうの通路を、男達が歩いていた。
今は昼間だ。顔が良く見える。寧ろ禿頭が硝子越しの太陽で光って眩しいくらいだ。
「…………。」
「ヤァ」
「あ゛?」
男達の背中に声をかけた。
不愉快そうにこちらを振り返る。男達の顔をハッキリ認識した。
「君達に一寸聞きたい事が有るのだけど。」
「誰だ手前」
ふむ……私の顔を知らない……
「之は失礼した。でも、名乗る程の者ではない。只、聞きたい事が有るのだけど。」
さっきの言葉を復唱すると、男達は不機嫌そうに眉根を寄せた。
「君達、最近此処に出入りしてる闇業者を知らない?いやね、最近其奴が一寸目に付く事をしているらしくて、ボスが処分を考えているらしいんだ。」
男達の息を呑む音が分かった。
空気に緊張が伝わる。
「だけど私は男達の顔を知らないものでねぇ、こうして、皆に聞き回っているのだけど……知らない?」
1歩踏み出すと、男達は一瞬たじろいだ。
矢張り此奴等だ。
「知らねぇなぁ。其奴等が何をしてるかは知らねぇが、ボスの逆鱗に触れるなんざ馬鹿な奴等だ」
「おお!!知っているんだね!!」
「はぁ?お前、今此奴が言ったじゃねぇか。『知らねぇ』って」
後ろにいた男が呆れたように、舐めた口を聞く。
本当に、莫迦は理解に欠けて困る。
「其奴は2人組もしくはそれ以上という情報を教えてくれて有難う。」
私のこの言葉を聞いてもピンとこないなんて、本当に脳みそが足りていないようだ。
「でも私は、『其奴等』なんて、言ってないのに、どうして複数人って、分かるの?」
「っ……!!」
緊張の空気が一瞬で焦りに変わった。
こんな莫迦でやっていける闇業者を扱う理由が全くわからない。
内心、溜息を吐きながら観察するように二人の顔をじっと記憶する。
二人共巨漢で、最初に私に言葉を返したのは綺麗な更地を堂々と見せびらかした禿げ。
もう1人は短いパンチパーマの様な髪型で、街中の破落戸不良みたいな、ゴロゴロと大きい装飾品を着けている。
「所で、君達は見ない顔だね。新入り?」
「…あぁ。ついこの間、街で屯してるところをボスに引き抜いてもらったんだ。」
スカウトねぇ……。
莫迦だなぁ。街で屯してる奴なんて大体莫迦ばっかり。屯すなんて弱くて莫迦な者がする事だ。
嘘の吐き方まで莫迦とは本物の莫迦の風上にも置けないよ。
だけど、其の莫迦に私の大切な者を壊されてるなんて、吐き気がするよ
「私はそれなりに此処に居るから街の流行りにさっぱりなんだ。何か面白い事を知らない?」
此奴等なら会話を逸らしても全く気付かなさそうだ。
何時の間にか緊張を解いて、寧ろ舐めたような視線に戻っている。
「お前、『中原中也』って知ってるか」
「おい!!其はっ……」
禿頭の男の発言に、パンチパーマは少し焦ったように言葉を止めようとした。
「あー、ボスのお気に入りの子なぁ?何せ、私はそこら辺にも疎くてね」
ゾワゾワと沸き上がる憎悪を落ち着かせながら自然を纏う。
「其奴がいい暇つぶしになるぜ。それでいてボスにも言わねぇ。最高の玩具だ」
ニヤニヤと気持ち悪い。
中也がこんな奴等に扱われていたなんて腹立たしい。
「……私のモノに手を出しやがって……」
「あ?なんか言ったか」
「いや、迚も面白そうだと。」
ターゲットは分かった。
碌でもない男達だと。
私はこみ上げる汚い感情を全て押し殺して彼等に背を向けた。
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