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「魔咲!狼城!逃げんな!」
「じゃあその手に持ってんの捨てろよ?!」
「無理!俺も着るから!サイズ確認したいから頼むから来てくれ!」
「じゃあ俺も無理!」
俺の車椅子を押して全速力で魔の手…ではなく吉柳から逃げる。
何故逃げるのかと言うと、そりゃあ吉柳の手には演劇部から借りた女物の服があるからで、それを着たくない俺らはこうして逃げてるのだ。
「冗談じゃねぇよ、誰がするかってんだ」
「ほんとな」
「マジでお願い!俺を椿先生から救うと思って!!」
「…脅されたか」
「かわいそうだけど今は聞けない」
以前、化学を減点すると言われたことが有るくらいだ。吉柳の言い方からして涼に脅されているんだろう。
かわいそうだとは思う。思うけど…女装だけは勘弁。
「椿先生からの伝言!」
ー『着なかったらお仕置きね?昴流?』ー
「…っ?!!」
俺らを止まらせたくてついた嘘なのかもしれないが、涼が言ってもおかしくないそれに心臓が跳ねる。
お仕置きは嫌だ。けど女装すんのはもっと嫌だ。車椅子を止めそうになったのを寸で止め、俺は逃走を続けることを選択した。
「ろーじょー!!まーさーーきーーー!!」
「いーやーだー!!」
かれこれ吉柳から逃げて30分。
愁のスタミナが切れたのもあるけど鬼ごっこは俺らの負けで終わる。
…目の前に広がる壁のせいで。
「行き止まりかよぉぉぉ…」
「…飛び越えるか」
「無理、流石にこの高さは無理」
「だよな」
…つまり
「逃げた意味無し!」
「…当日サボるか」
「それだな、今日は諦めよう。今日は」
そうだ、"今日は"負けた。本番は逃げきってやる。
「お前ら悪あがきしないでくれ…!!」
吉柳の切実な願いが学校に響き渡った。
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