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「…?とーかさんやっぱピザ食べたいの?」
「どうしても私を食意地がはった人にしたいのね」
もっもっとピザを頬張っているとまたとーかさんから視線。
ナイフで切ったピザをあげようとしたんだが、どうやら違うらしい。
「随分とまあ、綺麗に食べると思って?男って大体素手でいくでしょ」
「そう…?普通じゃね?」
「男子高校生でイタリア形式で器用にピザ食べる人は早々いないわよ」
「えー…」
そんなに珍しいかなあ。だってピザ熱いじゃん?手で持てるの待ってたら冷めるだろ。
まあ、俺も面倒なときとか、元から手で触れる熱さの時は手で持つけど。
「格好つけで食べる人はいるでしょうけどね…あなたは慣れてるじゃない?」
「父さんと兄さんを見て育ってきたから気がついたら身に付いてたんだよ」
就学前の、まだ小さいときは2人も俺のためにか家にいる時間が普通の家庭よりは多分短いけど長かった。一緒に飯を食べに行ったりもした。
早く2人に追い付きたくて、食べ方…なんて小さいところも見よう見まねでしてたっけ。
「へえ…良い家で育ったのね」
「俺には勿体ないくらいにな。…2人とも医者なんだよ」
「あら、そうなの?」
「父さんが桜木っつー病院の院長」
「えっ、桜木…?!!」
「それってここらじゃ1番大きい病院じゃない」と続けてそういい、驚きを隠せない桐華さん。
まあ、名字は違うし父さんの病院かなり大きいから最初は驚くのも無理ないかもしれない。
前は驚かれるのが嫌だった。俺があの人達の家族じゃないと突き付けられるようで。
でも、2人と和解してもう嫌ではないと言えば嘘になるけど、不安になるほどではなくなった。
「…こんな落ちこぼれが桜木だなんて、って思うだろ?」
自嘲気味に。
周りがそう思うのは極普通のことで、何度だって言われ、蔑む目で見られてきた。
俺自身も、それは否定しない。俺がしてきたことは無くすことはできないから。
「あんたのお父さんって優しい人?」
「…父さん、っつーか、皆…兄が2人いるけどその2人も優しいよ」
「そう」
けど、桐華さんはそれに頷くことはなく、かといって首を振るわけでもなく俺の質問には無関係にも聞こえるそんな質問をしてきた。
きっと、母さんについて聞いてこなかったのは、俺の名字が父さんと違うのと、俺が母さんについては言わなかったから気を効かせてくれたんだろう。
「確かに、あんたはそう言われても仕方ないくらいの事をしてきたかもしれない。中学の時はね。……でも、"親子"ね。会ったことはないけど、似てるんでしょうねわんこと。…うん、胸張って良いと思うわよ。家族の一員だって」
驚いた。「胸を張って良い」なんて言われたのこれが初めてで、どう返したら良いか分からなかった。
「あんたは優しい、自分の事よりも他人を優先してしまうところとかね。…きっとあんたが他人には敏感になるのもその延長線。あんたのその優しさは家族から来たものなんじゃないかしら。だって皆優しい人なんでしょう?子供は親の背を見て育つって言うけど、本当にそうなのね」
「…俺そんな言うほど優しくないと思うけど、例えそうでも"それだけ"じゃん」
「"十分すぎる"わよ。1度も道を外さない人は居ないわ。大事なのは"内側"よ。…あのね、優しいって難しいことなのよ。あんたみたいに自分よりも他人を思いやれる人なんて特に。でも、あんたはその優しさを持ってる。素敵なことだと思わない?」
「…んなこと言われても俺には良くわかんねぇよ」
優しい、とか。優しくしようと思ってできるようなもんじゃない。
「あんたが分からなくても、あんたの良さを知ってる人は沢山いる。その1人の私が言ってんの。胸を張りなさいって」
理解できないことばかりで、初めてそんなこと言われたから戸惑ってたってのもあるけど、それでも桐華さんの言葉に胸の奥が熱くなった。
「分かった?わんこ」
「んっ、あり、がと…」
「泣いてんの?」
「…うるさい」
自分でも訳が分からない位にポタポタと机に滴が落ちていく。
嬉しい…嗚呼、そうだ。嬉しかったんだ。
父さんたちと家族であると他者から認められたその言葉が。
「…やっぱり、とーかさんお母さんみたーー…に゛っ?!」
「次言ったら部活のメニューがハードになると思いなさい」
「…はい」
それも嫌だけど、器用に脛の同じ位置を蹴ってくるの止めてください。
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