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「だ、だめ…!!」
「…ん?」
朝食も食べ終わり、着替えを済まそうと寝巻きを脱いでワイシャツに身を通そうとする涼に慌てて制止の声を掛ける。
涼が止まっている間に泊まる用の少し大きめな鞄から袋探しだして、その中にあった1つを俺の行動にはてなマークを浮かべ待機している涼に渡した。
「…たんじょ、び…プレゼント…その…おめでと…」
「…へぇ」
渡したのは、兄貴に勧められた店で買ったワイシャツ。ネクタイだけ買うつもりだったけど、それだけじゃあ寂しい気もして店員の人に相談しながらそれも買った。
出張な訳だし、仕事内容にもよるけどマナー的にも柄は控えた方が良いと兄貴に聞いたから、模様の主張が激しすぎない良くみたら分かる程度のチェックの織柄が入った白色のもの。
「似たよう、なのあったり…その…俺そんなセンスないし…気に入らなかったらごめん…」
「ふふ、何で?昴流が一生懸命選んでくれた奴なんだから嫌な訳ないだろ?白なのは出張に合わせてくれたの?」
「…兄貴からその方が良いって聞いたから…」
「やばぁ…、超嬉しい。うん、今日はこっち着ないと駄目だな。これ着たら頑張れそう」
着ようとしていたワイシャツをハンガーに掛け直して、俺が渡したワイシャツを鼻歌混じりに腕を通していく涼。俺のセンスだから不安なところもあったけど、シャツだけでこんだけ喜んでるのを見てるとこっちまで嬉しくなる。
ボタンを全て留め終わると、クローゼットの中に掛けられてるネクタイの方へ涼の手が伸びる。あまり意識して見てこなかったが確かにネクタイは真さんが言うように、スーツやワイシャツに比べると数が少ない。
「あ…りょ、お…」
「んー?」
「ねくた…い…俺が付ける」
「…っふふ。昴流ってば本当俺のお嫁さん。はいどうぞ奥さん」
服の裾を引っ張って、俺がそう言えば涼の目が細まり、俺がやり易いように身を屈めてくる。
ワイシャツと同じくチェック柄に統一されたえんじ色のネクタイ。グレーと悩んだけどグレーは涼が似たようなものを付けていたことがあるのを思い出して、こっちにした。
巻き方もちゃんと調べてみたり。ネクタイってただ結べば良いって訳ではなく、ちゃんと正しい結び方ってのがあったから、練習もちゃんと。スーツって面倒臭いなって正直に言ったら思ってしまった部分もある。
「…でき、た」
「…ふふ、ありがと昴流。だーいすき」
「ひゃっ…」
最後にこれも店で買ったタイピンでネクタイを留めたら完成。
練習よりも上手く出来て満足。全体的なバランスのセンスの方はどうか分からないけど店員さんに相談したんだし多分大丈夫だ。「どのジャケットに合わせても違和感ないと思いますよ」って言ってたから、うん。多分。
涼がネクタイの柄を確認するように視線を下に下ろすと、その唇は緩く弧を描き、涼が俺の額に唇を軽く押し当てた。
「健気ちゃんのお陰で今日も頑張れそう」
「ほんと…?」
「嘘言う訳ないじゃん」
「うれし…い…」
涼の笑顔。それを見てると胸の奥がきゅんきゅんとした。
涼が笑ってくれたこと、それが何よりも嬉しい。涼のプレゼントにこれを選んでよかったって思えた。
「…あ、後…えっと…」
「ん…?」
はっ、ともう1つの存在を思い出し、パタパタと小走りで玄関の方に涼の家の鍵を取りに行く。
プレゼント一式を入れていた袋の中からもう1個、奥の方にあった小さいそれを鍵に取り付けてから涼にその鍵を返した。
「りょ、とお揃い」
街を歩いていたら偶々見つけた、ストラップ。
黒色の狼のそれはサイズが俺がもらった合鍵につけられているキーホルダーと殆ど同じで、涼が気に入っている人形とデザインが似ていたから、スーツ類のものだけを買うつもりだったのに買ってしまった。
「?…りょう…?…あ、う…嫌だった…?」
「うん…ごめんマジで…、これは…ちょっと無理、待って…。整理が追い付かない。ここに天使がいる…」
中々涼が鍵を受け取ってくれなくて、キーホルダーは流石に子供っぽくて嫌だっただろうかと心配になってきた。
どうしようかとわたふたしていると、涼が急にその場にうずくまってしまって、暫く俺の混乱は続き、俺の方がちょっと無理って言いたくなった。
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