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リビングに戻ったらIHの電源を入れて作り終わっていたロールキャベツとスープを弱火で温め直す。
温めてる間に涼のコートをハンガーに掛けたり、洗濯物を洗濯機に入れたりと涼の荷物の整理を手伝う。
「…あ、これ…」
「ん?」
「ちょ、こ…」
スーツケースの隅にあった店で買ったのであろうチョコの袋が5つ位あった。俺ブランド物とかそう言うの疎くて袋に書いてある名前は全部見覚えがないけど、袋とか箱のデザインからして良いところのチョコなんだってのは分かる。
「あー…それな」と俺の手元に移ったその袋を見て涼が苦笑いする。
「今年は出張だしもらわねぇだろうなって思ってたら態々買って渡してきた奴もいてさ」
「そう…」
当日に買いに行って涼に渡して、しかも高いチョコってことは涼に気があるってことで、そう考えると胸の辺りがズキズキする。
手に持っていた涼がもらったチョコの袋を握っていた手に力が入り、くしゃりと皺が寄る。
「すーばる、それ頂戴?」
「…あ、う…ごめ…袋…」
「良いよこんなの気にしないで」
涼に言われ、我に返り、グシャグシャにしてしまった袋ごと渡す。涼は俺の頭を撫で、それを受け取るとチョコの入った袋を全部持って何処かへ向かうのを目で追いかける。
…と、涼の足があるものの前で止まり、ビニール袋と擦れるような音を出しながら1個、また1個とその袋は消えていった。
「え、ちょ…涼…?」
「ん?」
その行動に思わず口が開く。
涼は何か問題があったのかと言いた気な目をこちらに向けて、首を傾げる。
「それ、高い奴じゃ…」
「だろうな」
「捨てる、のは…」
涼がチョコを投げるようにして突っ込んでいたそれは、塵箱。もしかして俺がチョコを見て嫌だと思っちゃったから捨てたんじゃないかと思って止めに入る。
が、涼は「昴流が気にすることじゃない」と止めに入った俺に微笑んで、最後の1つもダストボックスへとシュートを決めた。
「ごめ、ん…なさい…」
「…ん…?何で昴流が謝るの?」
「だって…気、遣わせちゃったのかなって…」
俺があんなに過剰に反応しなければ涼はこんな行動に出なかったんじゃないのか。俺がそうさせたんじゃないのか。
そう思ったら申し訳なくなって小さな声で涼に謝った。
「…すーばる。そんなんじゃないから安心して?自分を責めないで?」
「でも…おれ…」
「まぁ確かに、昴流をしゅんってさせる存在に苛つきがなかったと言えば嘘になるんだけど、捨ててんのは毎年だから」
「まいとし…?」
「そ、だからそんなに責めないで?昴流のせいじゃないから」
涼が言うにはもらったチョコを捨てるのは子供の頃からならしく、捨てなくても臣にあげたりするだけでもらったものを食べたことは一度もないんだとか。
「俺他人の手作りとか食べれなくてさ。買ったもんでももらった奴なら無理で…拒絶反応が出るっつーか、食べたら吐いちまうと言うか…。自分で買うには平気なんだけどね。だから別に昴流が負い目を感じる必要はないよ」
嗚呼、そう言えば雪路さんの家に行った時そんな話を聞いたかもしれない。俺の食べれてるし、向こうで出されたのも、まぁ俺が作った奴の方が良いって言ってあんま食べてはなかったけど食べれてたから無理なの治ったのかなって思ってた。
「親戚のはギリギリな」
「…でも、涼俺が作ったの自分から食べたいって…」
「ほら、昴流は俺のお嫁さんだから。昴流が特別。自分から食べたいって思ったのは昴流が初めて。大好きだから食べれんの」
「とくべつ…」
その言葉だけで、昨日から胸に絡まっていたもやもやが溶けてなくなっていく。
涼の特別。俺が初めて。その言葉が嬉しくて頬が緩む。
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