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「昴流はチョコ今年ももらった?」
晩飯を食べ終わりそうになった頃、そんな話題になり俺はその問に小さく頷いた。
「30…?とか…」
「へぇ…去年よりは少ないな」
学校の時のことを思い出しながらおおよそで告げるとその数にピクリと涼の眉が動く。
涼の発言に「それでも多い」って言葉が本来続いているような気がしてならない。
「それどうしたの?食べた?」
「半分愁にあげて…もう半分は放置してる。兄貴が食べるんなら食べるだろうし…。俺チョコそんなに食べれねぇから…」
「あー、そっか。甘いの苦手だもんね。…少しは食べたの?」
「えっ、あー…とーかさんのと舞那ちゃんにもらったのはちょっとだけ」
「…あいつ等なら良っか。魔咲とか、吉柳とか。そこら辺なら良いけど後はあんま食べないでね」
「俺嫉妬で狂うかも」と続けて言われ、大きく頭を揺らす。
2人以外にも兄貴や優さんとか、優さんの店の常連の梓さんみたいな人達とか、涼が知ってる範囲での『義理チョコ』?って奴は許容範囲内らしい。
それ以外は兄貴と愁に涼が嫌がるならあげようかな。俺も涼が友人からとか家族からじゃなくて、知らない人からもらったチョコ食べてんのは嫌だし。
「ふふ、良い子」
「んぅぅ…」
俺がこくこくって頷くと、良いことをした子供を褒めでもするかの様にわしゃわしゃと頭を撫でる。物心付いたばかりの子供扱いされてるみたいで複雑な気分だが、涼の機嫌が良いから止めろと言う気も失せる。
涼が嫌なら俺来年は断れる分は断ろうかな。どうせもらっても俺自身困るだけだし。
「すーばる。デザートにしよっか。今日さ向こうで買ってきたんだよね」
俺が涼よりも数分遅れて食べ終わると、涼が立ち上がって食器棚から皿とフォーク、それから新しいコップ。冷蔵庫からはペットボトルのコーヒーと、帰ってきた時に持っていた直方体の物体を取り出して、それらを食器を端に避けた食卓の中央に置いた。
デザートって言ったんだからこの箱の中はお菓子なんだろうか。何だろう。
「お前の誕生日の時みたいにオーダーは出来なかったからどん位甘いのかは分からないけど…、甘党じゃなくても食べれるらしいから。んー…俺からのバレンタインチョコ…じゃあないな。ケーキ?」
直方体の物体の中身はタルトだった。5人でわけたら丁度良さそうな大きさの、ホールのだ。
全体的に淡い黄色で所々に焦げ目がついているそれは、スイーツをあまり食べなくてスイーツの名前なんてメジャーなものでも分からないものがある俺でも分かる。と言うか、菓子の中では好きなもの上位に入っているんだから分からない訳がない。
「好きなんだろ?チーズケーキ。…あっ、これタルトか…」
覚えててくれた。俺が女子にバレンタイン関連で質問されたって涼に伝えた時にちょっとだけ触れただけだったのに。たったそれだけの、涼から質問された訳でもない軽い発言だったのに今日まで覚えて、買ってきてくれた。
「…あ、りがと…」
「…かわい。嬉しそうにしちゃって」
嬉しくないなんてあり得ない。今年だけじゃない、今までもらった中で1番のバレンタインチョコ…じゃなくてタルト?食べるのが勿体ない。家宝にすると言っていた舞那ちゃんの気持ちが分かったかもしれない。嬉しかったら逆に食べたくなくなるって言うか。保存しときたいって思ってしまう。
…否、それこそ勿体ないし食べるけど。
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