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翌日涼に起こされ、何故か着替えるのを急かされた。言われるがままに着替えて顔を洗ったら、泊まりの荷物を持ってこれまた言われるがままに涼の車に乗せられる。
その中で渡されたコーヒーは起きてからちゃんと飲めてない朝のドリンクなようで何故自分が今ここにいるのか分からない状態でストローを吸ってコーヒーを飲んだ。
「りょー…何処行くの?」
「なーいしょ」
「え…」
出た、内緒。夏休みん時もそれ言われた。
どっかに向かってるってのは流石に分かるんだが、涼の内緒はマジで内緒だ。シークレットだ。途中でネタバレ要素が漏れてくることがない。現地に着かないと分からない。
「ちょっとヒントあげると、ご褒美」
「ごほ…?」
うーん…ヒントのようでヒントじゃない。
ご褒美って何、何のこと。
「ちょっと高速走ったら直ぐだから昨日のタルト食べて待ってて?」
「え、あ…うん…」
小さい箱に移し替えられた2つに切り分けられたタルトを渡される。ついでに使い捨てフォークも。用意周到だな。
タルトは早く食べないと痛んでしまう。でもそうは言っても何日は持つ訳で、涼の家で少しずつ食べようって思ってたのに、ここに持ってきたってことは泊まりの荷物も車に詰められてる所から察するに泊まり掛け…?
えっ、泊まるの?ますます分からなくなってきた。
「昴流、俺にも頂戴」
「あ、嗚呼…、はい」
「ん」
高速に乗って目を離せない涼の代わりに一口サイズにタルトを切って口元に運んであげる。
視線は正面のままで首だけ動かしてそれを食べるとまた顔を正面に向けた。
「間接キスご馳走様」
「っは…?!」
片手で器用に缶コーヒーのタブを開けて、飲みながら運転する涼から然り気無く言われた一言。
間接キス間接、キス…か、かんせつ…きす…。
「…っばか!!」
何度もされたことのあるそれ。俺が言われなかったら大丈夫でも、そう言われたら意識してしまって、食べにくくなるのを知ってて意地悪してくる。
運転の邪魔をする訳にもいかないので、ただ涼を睨むことしか出来ない。だから代わりに視線と口の両方で暴言を吐いた。
涼は正面を見たままで「可愛い可愛い」と手探りで俺の頭を撫でてくるだけ。
「…これ、食べれなくなったじゃんか…」
「着くまでにそこから進んでなかったらお仕置き」
「えっ」
そんなことでお仕置きとか嘘に決まってる。…と、言いたいところだが涼ならマジでやりかねない。
性格悪過ぎ。そう言ったらお仕置きはなるべく避けたい俺が頑張って意識してしまったものを食べるのを選ぶって分かっててそんな選択肢を出すんだから。
「どえす…っ!」
「全部って言ってないだろ?昴流の胃の大きさからして食べきれないかもしれないし?食べ残ったら向こうの冷蔵庫に入れて夜食べれば良いしな」
俺にはそれが「食べれなくなるまで食べてね」に聞こえて仕方ない。そんなにお前は俺がお前の間接キスの後にあたふたしながら食べてるのを見たいのか。
「…後で覚えてろ馬鹿…っ」
「怖い怖い」
その台詞とは真逆に顔には笑み。どう見たってこの状況を楽しんでる。ドSじゃあ表現しきれないドSだ。
きっ、と今日1番の鋭い睨みを涼にしたら、手に持っていたフォークへと目を移す。
涼の唇が触れたフォーク。それを意識してしまったら使ったらいけないような気がしてならなくて。
でもフォークはこれしかなくて、食べれなかったら何故か理不尽にもお仕置きで。
何分間か葛藤した後に、恥ずかしいのをぎゅうっと堪えてフォークをタルトに突き刺した。
それまでの時間、それからその後顔を赤くして食べていたのを横目で見て涼が笑みを浮かべていたことを俺が知ることはなかった。
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