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「なぁ、おい。誰が座って良いつった?あ゛?」
仮面なんてもの放り投げて、正面の奴を睨む。
俺の態度の変化にこいつらだけじゃなくて周囲の空気も冷たくなるのを感じたが、今更怒りを抑える気にもなれない。
俺の右腕を掴んでいた手の力が緩まると振り払って前髪を掻き上げた。
「椅子から退け。いつ、誰が、誰の正面に立って良い許可出した?こっちが言い返さねぇからって調子乗ってんじゃねぇぞ餓鬼」
足を組み直して、見下す。昴流相手に向けたことはない目で、口調で、声で。言葉を言い放つ。
俺の豹変っぷりに未だ固まり、椅子から退いてくれそうにないので机の足を思いっきり蹴って轟音を鳴らす。
元々の俺はこう言う奴。性格に難あり。彗に気性の荒さを直した方が良いと言われたことは数知れず。
こんな奴等に口調だけでも柔らかくすることすら馬鹿馬鹿しい。悪かったな、俺は昴流以外の奴に心からも、猫被りでも、あんな風に微笑んでやれる程器用な性格はしていない。
「う、うちらただ遊ばない?って言っただけじゃん。何キレてんの…」
固まってた1人が口を開く。どの口がそう言ってるんだか。それだけならさっさと余程の馬鹿じゃない限り1度俺が断ったときに退いてる。
「俺にご自慢らしい胸を押し付けて?盛ってんじゃねぇぞ猿。欲求不満なら他当たれ」
「…っい゛…?!」
周囲を見渡し、まだ昴流らしき人影がないことを確認してから俺の腕に胸を押し付けてきた奴の胸をわし掴んで力を込める。
恐怖からかは知らないが、涙目になっているそいつに目を細め、「くは…っ」と喉を鳴らして笑った。
「…嗚呼、それともあれか?3人仲良くそう言うプレイご所望?なんなら今からホテルに行くか?良いぜ?相手になってやるよ。丁度お前らのせいでむしゃくしゃしてるしな」
その位なら10分も要らない、と付け加え、下の方向へ力を加え無理矢理屈ませ、耳元で囁く。
「ーーー…」
「ひ…っ?!な…も、もう行こ…!!最低…!」
「え、ちょ…っ?!」
俺の発言に顔を真っ青に染めて、俺が胸を掴んでいたてから逃げるとさっさとお仲間の腕を引っ張って走って俺から逃げていった。
昴流って可愛い天使の存在があるにも関わらず俺が他人の為にここから1歩でも動くなんて有り得ないのにな。真に受けて馬鹿みたい。
最低…だなんて。俺が1番良く分かってる。それで何度過去に殴られたことか。怖がられるような目も、何度だって向けられてきた。
「…汚ぇな」
女がいなくなって手のひらや腕にまだ残る感触に舌打ちする。触れた部分に虫が這ったり、菌が体を腐食していくような感覚が走って気持ち悪い。コートはどうしようも出来ないから手だけはトレイに食べ物と一緒に入っていたお絞りで念入りに拭く。それでも違和感は無くならなくてフリーで置かれてるお絞りを何枚も取りに行って、開けては拭いてを繰り返した。
潔癖…って訳じゃあないと思う。部屋はある程度綺麗ならそれで良いかってレベルだし、いつも掃除、掃除、掃除って綺麗な状態を保たないとって義務感にも近いものに駆られたことはない。
ただ、人との接触が異常に無理って言うか。ヤってた時はそこまで気にならなかったんだけど。自分もそこが異常だってのは認めてはいるが、気がついてたらそうなっていたものを治す術は今やないに等しいだろう。
まぁ、別に。昴流には触れるし、嫌になるどころかムラムラしっぱなしだし、昴流相手なら大丈夫ならもうそれで良いかなって。
「涼ごめ、ん…遅くなっちゃって…」
やっと手の違和感がなくなって、昴流に見せれる状態じゃないからお絞りの残骸を捨てに行って机の上を綺麗にする。
机の上が元通りになり、何もなかったように愛煙を味わっていると、そこに戻ってきた天使ちゃん。
ほらな、混んでるのなんて昴流のせいじゃないのに最初が謝罪の言葉なんて。こんな良い子よりも優先したいとか思う人間なんて現れるだなんて思えない。
昴流といるだけで腸が煮えくり返りそうだったのも次第に鎮まっていく。
待たせてしまったことにしゅーんって耳と尻尾をを垂らして申し訳なさそうにしてる昴流が可愛くて、愛おしくて、頭を撫でた。
「ふふ、ベルが鳴ったの遅かったから大丈夫だよ。ご飯食べよっか」
「…ん。…あ…、遠くから…その、お、おんなのひと…見間違いかもしれないけど…何かあった…?」
「嗚呼…」
見られたのか。聞いた感じだと去り際をちょこっと見ただけかな。俺に聞きたいことある筈なのに、自分よりも相手の意見を尊重しようとする優しいところ。もっと欲張りになったって俺は嫌いになんかならないのに。
…でも、今回は昴流のその優しさに救われたかな。
「この店がどこにあるかとか聞かれただけだよ」
嘘吐いてごめんね。でもお前を不安にさせたくないから本当のことは言えない。
…それに、言った内容も内容だしなぁ。話すってことは俺が言ったことも少しは触れないと駄目で、出来れば昴流には聞いて欲しくない。例えそれが向こうに昴流が帰ってくる前に消えてもらう為に言った台詞でも。
「…涼ここが地元じゃないのに」
「本当ね」
その言葉を信じて、安心したように顔が緩まる。俺を信じて疑わない。…否、聞きたいところがあっても相手のことを一番に考えて、信じる。そんな素直で可愛い子を見てたら自然と笑みが零れた。
今すっごい昴流を可愛がりたくて仕方がない。耐えろ、俺。ここでキスでもしたらまた恥ずかしがり屋さんに逃げられてしまう。可愛がるのはホテルで2人きりになってから。
「だから『知らない』って返しただけ。…俺が女に話しかけられてんの遠くから見て妬いちゃった?」
「そんなの、じゃ…」
妬いたのか。言葉が詰まってるからバレバレ。嘘が下手な所も可愛い。
実際言ったのは昴流対しては言ったことはない、「知らない」なんて優しいものでもないんだけど。
ー「動けねぇように手足どっかに縛り付けて。バイブ突っ込んで。嗚呼それから助けも呼べないように口を塞いでやるよ。そんでお前らに邪魔された分俺お前らを殴って満足したら俺は連れのところに戻るけど、俺を誘ったってことはそう言うことだよな?」ー
…なんて、まぁ一部分でも昴流には言えないよね。
昴流を怖がらせてしまうだけの発言なんて、口が裂けても言うつもりもない。やるつもりも。
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