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「…邪魔しかしねぇなこいつ」
ボソリと呟いた涼の声はかなりドスの聞いたもので大魔王様ボイスに体が跳ねる。
「邪魔"しか"しない」。まるで1度目があったような言い方は恐らく、その教師の名前が確か松永って名前だからだろう。担当科目家庭科。涼が調理実習をするって聞いて「俺だって見てないのにエプロン姿お前が見るなんてあり得ない」って言っていたあの松永だ。
家庭科の教師と言われたら失礼な話だが40代50代のベテランの、いかにも"家庭科"って感じの教師を想像するかもしれないけどこの松永は多分涼と同い年位だ。
「椿先生…?えっと、その、それとそこにいるのは…」
俺のことを聞かれ、バレると心臓が警告音を鳴らす。近づいてくるヒールの音に涼のシャツを握っていた腕に力が入ってしまう。
どうしよう。今、ここで涼に手を上げて逃げたら後は涼が誤魔化してくれると思う。そしたら仲が悪いと思われているのなら事故でこの体勢になって俺が怒って涼に拳を食らわしたように見えるだろう。涼もそれに乗ってくれると思う。安全なのはやっぱり、俺らが仲良く思われてないのを利用する手だろう。でも涼を怒ってる訳でもないのに何の意味もなく殴りたくない。
「松永先生、お手洗いなら反対側のデッキですよ」
頭上からまたしても舌打ちするのが聞こえ、その次の瞬間、何もなかったかのように涼の声のトーンが明るくなる。何も出来ないでいる俺の頭を松永に見えないようにぽんぽんと撫でて、言葉を続ける。
「どうしても口寂しくて。我慢できなかったので紛らわせるものをね」
「…嗚呼、椿先生って喫煙者だったんですね」
「時々しか吸いませんが、日が開くとどうしても」
涼は何も嘘は言っていない。堂々として、こっちのデッキにいる理由を話してる。『喫煙』って言葉も松永から出させたものだ。
でも、それよりも目立つ俺の存在があるから話は逸らせれた…なんてことはない。すぐに松永の視線は俺の方へ向いた。
「椿先生、そちらは…」
「嗚呼、狼城君ですか?」
さらりと俺の名前を出し、影に隠していた俺を、体を少しずらして何の抵抗もなく松永に見せる。
そりゃあ変に嘘を吐いたって怪しまれるだけだ。でもこれも中々に危ない橋を渡っているんじゃあないだろうか。一体何を考えているのだろうか。涼の腕の中ではらはらと不安で胸が一杯になる。
「気分が悪くなったみたいでデッキに出てきましてね。私を避けてなのか隅で壁にもたれ掛かっていたんですが、急にふらりとよろけて。それで私が体を支えようとしたところに松永先生が来まして。…なので私が狼城君を壁に追いやっているようになってしまいましたね。ふふ…、ある意味で壁ドン、ですかね」
俺が涼の腕の中にいる嘘の理由を涼は焦りひとつ見せずに笑いながら話す涼。言い訳のようにすべてを否定したりせず松永からの視点での見え方を認めるところが真実味がある。
それに松永も納得してくれたらしく、「そうだったんですね」と言うのが聞こえほ、と胸を撫で下ろした。
「確かに、少し体がだるそうですね」
「熱はなさそうなんですが…、疲れたんでしょう。新幹線内は落ち着かないでしょうしね」
俺の額に手を当てて、熱があるか確認する誰にでも優しい目の前にいる教師。
Sな人間って、バレない嘘吐くの得意だよな。俺が知ってる限りじゃあ全員に当てはまる気がする。やっぱり相手をいじめたいが故にミスリードさせたりするから慣れてるんだろうか。
「昴流はえっちなキスに一杯感じちゃって腰砕けちゃっただけだけどね。口の中すっごい敏感で可愛い」
松永に背を向け見えない瞳を細め、俺にだけ聞こえる声で囁く。俺の前では場所・状況お構いなしでセクハラ紛いな発言してくるのやめてほしい。思わず松永の方を聞かれたんじゃないかって思って見てしまった。
もう本当にこの人は。危機感ってものが本当にない。
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