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人がいるんだから駄目なのに、危機感がないのかそれともバレないって自信があるのか。まぁ、涼の場合は恐らく後者なんだろうがそれでももうちょい慌てるそぶりとか見せても良いと思う。松永に向ける背は教師のものなのに、俺に向ける顔は、目は、涼の視界に映る俺を愛おしそうに見つめている。今にも好きだと囁いて、俺にキスをしてきそうなその目で。ほら、これだ。俺がはらはらしてる横で余裕そうにしてるんだから。しかも、こんな…。こんな、表情って。涼の熱い視線に耐えれず、俺は涼から顔をそらしてしまった。
「…椿先生、もし彼の体調が悪いのならお手洗いに…」
「私も松永先生が来られる前に言ったんですがね、行かないって断られました。多分ここで少し休憩したら大丈夫になると思いますよ」
「椿先生がそうおっしゃるなら良いのですが…その、彼…」
言いにくそうに「あの」とか「その」とか繰返し使用し、言葉を濁し、涼に察してくれと言う空気を出すそいつ。
それが意味するのは俺にだってわかる。何度も聞いてきた言葉だ。ただ、最近は中学の時や1年の時と比べて、聞く頻度が少なくなっただけ。松永は悪くない。俺が悪いから、涼を心配することを言っても仕方のないことだと俺は分かってる。
「…彼が、何ですか?」
「ぁ…、」
こんな言葉流して構わないのに、涼を良く知っている人間が聞けば分かる程度にトーンが低くなった涼の声。刺々しくなった雰囲気に、まずいと思って涼の服を引っ張る。そうやって向けられた涼の目は、俺に向けられるものだけは何も変わってなかった。俺を見るそれはいつだって優しくて、情熱的で。涼は一応まだ冷静を保っているらしい。
「2年間問題行動を起こさずに過ごしているのを知っているのにも関わらず噂を鵜呑みにするのはどうかと私は思いますけどね。…まぁ、確かに。回復したら殴られそうですが、それは支える形が悪くなった私のせいですのでお気になさらず。彼は例え殴っても力の加減はできますし、無闇矢鱈に力を奮いはしない子であるのは2年間担任をしていますので分かっているつもりです。それとも他に何か気になる点が?」
「…っ、いえ、椿先生がそうおっしゃるのでしたら…。仲が悪いと生徒達が言っていたのを耳にしたので…」
「彼はこうやって構ってくる私を嫌っているかもしれませんが、私は他の生徒同様大切な教え子だと思っていますよちゃんと」
先と同じ。怒ってるのは雰囲気で分かるのに、感情任せに言うのではなくて松永の涼への心配にも肯定し、その上で意見を淡々と述べる。
こんなこと「大丈夫」の一言で終わらせとけば良いのに。
「…それで、松永先生は…お手洗いではなかったんですか?」
「あ…、すいません。そのつもりだったんですが…、えっと、確かこちらにはないんでしたっけ?」
「ええ、反対側のデッキですよ。私は心配ですので彼が落ち着くまでここにいます」
「嗚呼、はい、分かりました。ありがとうございます」
松永が来ただけであのイラつき様だったからそろそろ我慢できなくなったのか涼が話題を変える。
松永はそれにはっとなり、当初の目的を思い出したのか涼に頭を下げるとドアの向こう側へと姿を消した。
「やっと消えた」
「消えた、って…」
「昴流がいなかったら殴ってたかもな。邪魔してくる上にうちの天使を猛獣扱いしてんじゃねぇよ。お前と違って健気で可愛い良い子だっつーの」
松永がいなくなった瞬間涼の仮面は崩れ、毒を吐く口は止まらない。殴るって。俺よりもお前が怒ってどうするんだよ。嬉しくない…んじゃないけど、涼の立場が危なくなるのは駄目だ。それに、あの反応が"普通"なんだから。
「ふわ…っ?!」
「気にしなくて良いからな。大好き、大好き昴流。可愛い俺の昴流」
俺を抱き締めて、松永が言っていたことを頭の中から取り除くように涼が耳元で愛の言葉を囁き続ける。
涼は俺への気持ちにいつだって正直だ。俺がそう言われないと安心できなかった頃と全く変わってない。変態な発言はオープンにしなくても良いけど、涼のこう言うところが好きで、胸が温かくなる。
「…に、しても今回のはちょっと危なかったかな。俺の嘘にも限界あるし。ごめんね怖かった?」
「…次は、もうないから」
「…もうひとつ向こうのデッキに行く?」
「場所の問題じゃない」
「いてっ」
今回のことで涼も外でキスとか、え…っちなことしてくんの懲りてくれたと思ったのも束の間、俺が予想していた方向とは違う言葉が続けられる。
そこは「もうしない」だろ。突っ込みだけじゃ足りないからデコピンの刑だ。
「…昴流を見てたらこう、ムラッときて抑えるつもりだったものが制御できなくなるって言うかね」
「俺のせいか」
「そう、俺のお嫁さんが可愛いせい」
ここまで開き直られると逆に何も言えなくなる。そうか、俺のせいか。俺は何もしてないんだけどな。
「昴流」
「…?な…んっ…?!」
「キスの続き、しよっか」
唇に、柔らかい感触。目の前の男が自身の唇をペロリとなめ、真っ赤な舌を覗かせる。俺の逃げ場をなくすように壁についた手。
つい先危なかったと本人も認めた行為をするなんて馬鹿なんだろうか。そうなんだろうか。
「だ…っっれがするか…!!ばか!へんたい!」
「っい゛…昴流ちょ、待ってそれは本当痛い駄目な奴。ごめん、怒らないで我慢するから」
勿論今回は乗らず、変態がしないことを誓うまで腕の肉を摘まんでやった。
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