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ANOTHER STORY:In The Case of DAVIL Ⅳ
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零の迎えが来て零に荷物を半分持ってもらい、何とかバイクで家に帰った1時間前。
シャワーを浴びてリビングに行くと相変わらず自分の家のように零はリラックスしてセッタを吸いながら酒を煽っていた。
零が迎えに来てくれたのはありがたかったし、一応恋人なんだ。久しぶりに会えたことへ何かしらの感情を抱かない訳でもないんだけれど、俺はそういう肝心なことが零にだけは言えない。いつも言えてたことがどう言えばいいのか分からなくて。俺らしくない分かりやすい嘘を重ねる。それか嘘すらも言えない。…何てまぁ情けない。
「ゼロちゃん何見てんの」
「あー?何か映画してた」
「何の映画?」
「テロっぽい事件もの」
「へー」
ソファに座って俺も酒を飲んで、感謝の言葉だなんて簡単に言えるはずのそれを言い出せずに話題を振る。
零が何かの映画って言った今テレビが映しているものは事件ものじゃあ良くありがちな展開。
こう言う映画って始まりは大体同じだから何となく見てない部分も想像できてストーリーに追い付けないなんてことは今のところない。序盤に出た伏線絡んできたらアウトだけど。
映画…テレビみたいに人間の心理も一直線であれば楽だったと思う。今こうして零に1度も素直に何か言えた試しがないことを気にしたりしてなかった筈だ。出来てたことが出来なくなるってかなり頭に来るって言うか、もやもやする。
向こうで買ったのも渡す相手が目の前にいるって言うのに渡せない。どう渡したら良いのか分からない。こんなことで悩んだのは初めてだから余計に。
あの女が恨んだ男の容姿にそっくりな俺は昔から女には困らなかった。小学生の頃、タッパがすでにあった俺は高校生と間違われたのか女にホテルに誘われ童貞喪失。ただで泊まる場所を与えられ、話術で同情を買い金をもらって。そうやって生きてきた俺は与えるよりも与えられることが多かった。
だから渡し方が分からないってのもある。それもあるけどやっぱり、"零だから"っていう方が強い。零だから、かける言葉に悩んでしまう。
自分を守るため、生き抜いていくため。そうやって他人の心を引き裂いてきた『嘘』がこんな形でコンプレックスになって帰ってくるなんて笑いものでしかない。
「愁…?どうしたぁ?むすぅっとして」
「してないし何でもない」
「嘘だろそれ。俺がテレビ見て構ってもらえないから嫉妬?」
「は?違うし。ないない」
そんなことで嫉妬はしない。ただ、見つめ直せば直すほど自分で自分が嫌になっただけ。顔も、体も、この性格さえも今ではコンプレックスで、嫌いなところがまた増えた。零といたら外見はそうでもない、でも内側はボロボロなそんな欠点だらけの自分に気づいてしまう。
それが表情に出てしまっていたらしい俺。こんな時こそいつもの嘘で表情を繕えば良いのに。こんなことも零の前では出来ない。
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