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教室に入って来るなり俺に抱き着いてきた兄貴。
仕事が忙しかったのか少し疲れていて、突っ込みたいところは色々あるがまず「大丈夫?」と兄貴に問うた。
「教室迷った。1年と教室違ぇんだもん…」
「…嗚呼、そっちな」
まさかの仕事じゃなくて弱迷子か。まぁいくつも校舎あるし去年とは教室も違うもんなぁ…。辿り着けたのはすれ違った人にしらみ潰しに場所を聞いていったってところか。
「つか、流星さん。来るの早すぎません…?」
「まだ最初の面談まで30分はありますよ…」
「え、嘘マジで?仕事終わって直ぐ来たからさ」
俺が一番言いたかったことを代弁してくれた2人。兄貴はそれを聞いてすぐさま腕時計と教室の掛け時計を確認した。2つ見たって時間は同じだと思うけど。
どうやら兄貴、全く時間を見ずにここに来たらしい。まぁ、そうだろうとは思った。見てたらこんな早く来てないだろうよ。
「そう言や椿先生は?」
「職員室に先行った」
「入れ違いか。助かった~…」
「…む?」
涼がいないと分かると安堵の溜息を零す兄貴。涼と話すと言うのに何で涼がいたら不味いことがあるのか俺にはその理由が見当もつかなくて首を傾げる。
兄貴の回答は「だって怖ぇじゃん」と言う思っていたよりも単純なものだった。
「会ったらいつも親の仇みてぇに見てくるんだからな」
「…そうなの?」
「そりゃあ毎回引っ付くからじゃ…」
「後『ハニー!』って言うから…」
「……しっと?」
「それが怖いんだってぇ…」
そんなに兄貴から見たら怖いのか。…嗚呼、そう言えば兄貴涼に何度も俺の呼び方指摘されてその度に直してたっけ。俺にとってはそんなところが可愛いんだけどなぁ…だってたった呼び方だけで嫉妬するとか。でも周りから見たら鬼の形相をしてると言っても過言ではないらしく、俺の知らないところで涼は大魔王様だ。
「椿先生が優しい先生だと思っていた昔に戻りたい…。あんな口調で、常に笑顔を浮かばせて柔らかい雰囲気漂わせおいてあれは詐欺だ…」
「それ、分かります。俺だって素の椿先生見るまではあんな真っ黒な人だとは…」
「だよな、本当そうだよな」
兄貴が去年、俺らが入学したての頃の参観日。当時はまだ涼が猫被っているのが信じられないと言っていた、今とは真逆な涼像に恋しそうにする兄貴。それに同調する琉生。2人して大きく頭を縦に揺らしている。
涼がどれだけ怖がられているのかこれを見たら手に取るように分かる。それとスイッチのオンオフの差が激しいことも。
「サタンの更に上ってなんなんだろうな」
「…『椿涼』って階級でしょ」
「それもそうだな。やべぇな名前だけで強いわ」
「どこにも漢字から想像できる爽やかで優しいものは感じられないのが凄いですね」
「俺もな、最初『うわ、名前も完璧だな』って思ってな。今じゃあ椿で想像すんのは薔薇の刺だよ」
語り出したら止まらない被害者?のドSさんへの悪口なのか愚痴なのか。良く分からないそれ。
サタンの上の新しい階級。涼が魔王のランクを越して神域の魔王に格上げされてしまった。あれだ、これ修学旅行の時も言ってたやつだ。それを言うなら俺は怖さよりも変態度が『椿涼』ってランクにぴったりだと思うんだけどな。あ、決して悪口とかじゃなくて…。
「…でも結局は涼と話すじゃん」
「流石に椿先生も教師の仕事全うしてくれるだろ」
「流星さん思い返してみて。修学旅行の行きと帰り」
「1%を切っていたとしても!その可能性に掛けたいだろ…!」
「や、それって流星さんがルウちゃんを『ハニー』って呼ばなかったら良いだけじゃん」
これには俺も同意だ。今まで例え人目があったとしても口調は教師のときのでありながらも周りには見えないように綺麗に影を作って目で嫉妬してるのを訴えてきた涼だ。仕事よりも俺を優先しようとして「修学旅行一緒に回れないなら教師止めようかな」とか本気にも聞こえるトーンで言った涼だ。
他の保護者もその場にいたらまぁ、兄貴の言う可能性もなくはなかったかもしれないけど…"三者面談"だから、なぁ…。まずないだろ。
だから涼が魔王様君臨させないためには涼を刺激しないのが一番の対処法…だと思う。
だから暫くは……うん。俺をハニーって呼ぶのは禁止だな。
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