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それから暫くして、ファイルと缶コーヒーを片手にカツカツと革靴の音を鳴らしながら教室に戻ってきた涼。いつもははだけているワイシャツも一番上まで閉めて、保護者用のバージョンだ。
涼は待っていた保護者に軽い挨拶だけすると一番初めの親子と一緒に教室の中へ入っていった。その時、俺の家族勢揃いなのを見て一瞬ぎょっ、としたのは見間違いではないと思う。
「…おい親父見たか?ド屑が教師らしかったぞ。誰だあいつは」
「初めてみる顔でしたね」
教室のドアが閉まると、兄さんがツンツンって父さんをつついて耳打ち。隣にいた俺には耳打ちなのも意味なく聞こえてしまう。…否、誰にも聞こえるような音量で言ったから聞こえた、の方が正しいか。兄貴がそれに爆笑してる。
「誰だあいつは」…って、中学生来の友人に言われることなんて滅多にないぞ涼。どれだけ子供の時荒れていたんだろう。
「琉生、ライン位返事しなさいよ」
「ひっ…?!」
「っわ…?!」
突然、廊下に響いた凜とした声。それにびくりと肩を震わした琉生が俺の後ろに回って抱きついてくる。ハムスターモードの琉生だ。
声をした方を向くと、キャリアウーマン?どこかの社長の秘書とかしてそうな感じの女の人がいた。
琉生の名前を呼び、それに対する琉生の反応からして琉生のお母さんだろう。初めて会う琉生のお母さんは琉生と違って背は高くなかった。身長はお母さんの遺伝ではないみたい。
「ちょっと、あんた何隠れてんの?」
「般若が後ろに見える」
まだ怒られてもないのにこの怯え様だ。余程吉柳家は女の方が強いと見た。
「…あら、この子琉生の友達?見ない感じの子ね」
「あ…、初めまして狼城昴流です」
「『すばる』…。…嗚呼、図体だけはでかくなってしまったあんたが不良にビビってたら身を呈して守ってくれた子?」
「止めてそれを言わないで」
「でも事実なんでしょ?」
「っす」
俺の名前で閃いたのか、ポン、と手を叩く琉生お母さん。ものすんごく「図体だけはでかい」を強調されて言われたそれ。身を呈して…なんてそんなことあったっけと自分のことながら過去を振り返ってみる。
…嗚呼、俺が刺されたあれか。守った…っつーか、あれは俺目当ての連中で、俺が悪かったから琉生を遠ざけたんだけど…。
「…嗚呼、じゃあこちらの人が『参観日に来たホストみたいな人』?」
「ぷっ」
「あぁ゛?!てめぇ彗笑ってんじゃねぇぞ」
「いつ転職したんですか?あなた」
「親父?!」
恐らく、最初に聞かされた琉生から見た兄貴の第一印象だろう。それをそのまま口にしたお母さん。『ホスト』と言う単語に口元を手で覆い笑いを堪える父さんと兄さん。兄さんは抑えきれずに吹き出してしまってる。
全ての人から聞く第一印象が『ホスト』な会社勤務の兄貴って。…何が駄目なんだろうな。
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