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俺が笑って見せ、だから大丈夫って言っても心配そうな顔は薄まっても消えることはない。こう言うところだけは何故か鋭いから、もしかしたら俺が大丈夫だって思ってても本当はそうじゃない、俺すら気づいてないことを感じ取ったのかもしれない。
「俺は大丈夫。無理になったらすぐ洗い流すからさ。…な?」
「…我慢できなくなったら言えよ…?」
「ふふ、はいはい」
「んゃ…っ?」
尻尾と耳が心配でしゅーんって垂れ下がってるのが見えて愛おしさで胸の奥がくすぐられる。可愛い尻尾を掴んだり、耳を擽ったりはせずに俺が手入れしてる昴流の髪に唇を落とす。昔からずっと変わらない優しい、石鹸の匂い。ふわふわした髪の毛。俺の髪も大分地毛よりも濃いめに染めたつもりだったのに昴流の髪に混ざると色がハッキリと現れる。
…嗚呼、そういえばこの色の混ざり方は、零と同じだな。零の髪は昴流と同じ真っ黒で、ちょっと天パが入ってて柔らかい印象だけど実際は固い。零自身が現れてるような髪質。…何て俺もどうかしてる。たかが髪の色で今ここにいない人間を思い出すとか。
「ちょっと先輩いちゃいちゃ禁止」
「…あー、うんめんごめんご。ルウちゃん可愛すぎて手出ちゃった」
舞那に言われてはっとなって昴流から顔を離す。昴流にも、俺にも。互いに付き合ってる人間がいるが長年続いたこの距離が染み付いてしまってる。零に触れるときとは違うけど、やっぱり昴流に触れてたら安心感があるからついついしてしまう。
俺が乱してしまった髪の毛を綺麗に手櫛で直してあげて桐華の方へ視線を向け直す。仕上げの髪留め。3人でどう考えても男が行くような場所じゃないキラキラした店に行って選んだ奴。客の香水がきつかったからもう二度と行かねぇ。吐きそうになってまで物選ぶとかあれで最初で最後だ。
「完成」
「すっごい可愛いです。先輩天才ですね。写真撮りましょう、写真。…あ、先に鏡どうぞ」
髪留めの位置を微調節して、終わり。完成に大体20分。仕事ならお金取ってるし、つーかまず仕事外では絶対にやらない位の出来。満足。
「…あら、本当に器用ね」
「髪留めは3人で選んだんですよー、それで魔咲先輩がそれにあった髪型を考えてくれて」
「へぇ…、くす」
「…何笑ってんだよ」
舞那に鏡を渡され、そこで初めて自分の髪型を見た桐華は確認するなり笑いだした。
「確かに、にゃんこが言うように髪型で分かるものだと思って。こちらこそ一年間ありがとう」
桐華にはちゃんと俺らの気持ちが伝わったらしい。立ち上がっては俺らの頭を撫でてきた。
「でも本当に考えたものね。こんなの早々思いつかないでしょ。色んな子にもらったけどこれが一番印象的ね」
「ほら俺天才だから」
「はいはいありがとねにゃんこ」
俺が冗談で言ったのを分かっているのか分かってないのか、笑って流して終了。否まぁ半分冗談なんだけど。そのもう半分は本気。俺が持ってるもの、全部を桐華に俺ら3人の気持ちを伝える手段として使ったのにそれで何も響かないとか言われたらそれはそれでショックじゃね?
「写真焼き増ししたら先輩にも送りますね」
「あらありがとう」
4人で写真も撮った。…現像するとき俺の髪色だけ加工してくれないだろうか、なんて一瞬思ったがこの写真くらいは大嫌いなありのままの俺の姿でも良いか。そうなっても構わないって俺がそう思える人ができたってことで。
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