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「桐華~そろそろ並べってさ」
「あー、了解。…じゃあ、そう言うことで。式前にありがとね」
桐華の同級生…多分友達?の女子がそろそろ式が始まることを伝え、桐華が立ち上がって列に並ぶために荷物を整理し出す。だから俺らも式場へ行く準備を始めることにした。
「嗚呼にゃんこ」
「あ?」
「あんたにはあんたにしかない良いとこ一杯あるんだからもっと自信持ちなさいよ?」
列に並ぶ直前、くるりと俺の方に振り返った桐華が俺にだけ聞こえる位の声でそう言った。それには俺も吃驚だ。桐華にそんなこと言われるとか思ってもみなかった。
俺にしかない良いところ、な。俺にはあまり実感がわかない言葉だ。
「顔とか?」
「残念ね、私あんたの顔タイプと思ったことないわ」
「ハッキリと言うな…」
容姿はステータス。良いところって言われて思い付いたのは俺がコンプレックスを抱いてるそれで、聞いてみたらズバッと切り捨てられた。
きつい言葉にも聞こえるが、多分「そんなので判断する訳ないでしょ、馬鹿なの?」って意味がそのきつさには含まれていたと思う。
「そうじゃなくて中身よ。人のこと見れるって凄いことなんだから。それだけで良さって広がっていく大きな武器。あんたに良いところが何もないなら私はきっとただこの髪型を見て器用にできてるって思う程度よ。だから自信持つこと。…分かった?」
「……へーへ」
「何よ、その不満あり気な返事」
「いーや不満なんて何も」
ただ、驚いただけ。やっぱこの人、すげぇ見てるなって。視野が広くないと言えないことばかりだ。…姐御肌って奴?口調のきつさは違えど美桜ちゃんもそんな感じだよね。女の子は強いって言うもんね。
後、それから。驚いたのと嬉しかった。俺にしかない良いところが沢山ある、とか写し目当てで寄ってきた奴に言われても腹が立っただけだっただろうけど、そんな桐華に言われたことだから、飾りなんて1つもない言葉が胸に響いた。
「ありがとな桐華」
「…っ、ちょっと何よ」
桐華の額に唇を落とす。キスには場所によって意味があるけど、そう言うのは関係なしで俺がしたのは感謝。
された方の桐華は額を押さえて吃驚して目を大きく見開いてる。
「クク…もしかしてまだ彼氏にもされてなかった?それは悪ぃことしたな」
「殴るわよ」
「ごめんって。怒んなよ桐華」
冗談でその反応をからかったのに、桐華の手には拳が作られてて慌てて謝る。桐華には彼氏…えっと、水瀬?だっけ。その人の話題は振らない方が良いっぽい。まぁ上手く行ってるんだろ。
「とーかさん」
「ん…?どうしたの、わんこ」
桐華が今度こそ並ぼうと視線の向きを変えると、今度は昴流が桐華を呼び止めた。何だ何だと首を傾ける桐華に昴流は呼び止め理由を小さく笑みを作って声に出す。
「1年間ありがと」
「卒業おめでとうございます」
「…マネージャお疲れ」
それに続いて俺と舞那もそれらの、卒業を祝う言葉を口にした。
時間。それは有限で俺らの意思とは無関係に進んでいく。
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