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式前に桐華さんの所に行った間、それから式中。愁は様子が普段と違った。否、いつも通りっちゃあいつも通りなんだけど、雰囲気的に?どう言えば良いんだろう。余裕がない、愁の笑顔に。
何度聞いたって愁は大丈夫って答えるけど、俺はずっと一緒にいるから愁は誤魔化してるのかもしれない小さな差にも、何となくでも気づけるのに。そりゃあ愁みたいに観察力は長けてないから殆ど勘だけどさ。
式が終わったら愁すぐ帰ろうとして、やっぱり無理してたんだろうなって勘だったのが確信に変わる。先から髪の毛ばっかり気にしてる。
「…桐華と舞那のとこ行かなくて良いのか?」
「舞那ちゃんには言っといたし、桐華さんには後で連絡するから」
「……そ」
愁のことを放っておくわけにもいかず、心配だったから俺も愁と一緒に帰ることにした。最後桐華さん見送ってあげれなかったからそれは電話で言うことにする。舞那ちゃんにも後で謝っとかないとな。
「…昴流」
「何…?」
「お前俺の見分けついてる?」
「……何それ」
式前に買ったチョコを口に放り込み、愁の喉仏が上下に動く。その後にぽつりと零されたそれに胸がモヤモヤとした。
「年齢とかそう言うのはなしな。そうなったら俺の見分け方ない訳だけどさ、…もし目の前にいる俺が、"魔咲愁"じゃあなかったら?そいつだと思ってた奴にこうやってさ」
「っぅ゛…?!」
「殺されかけたら?…それでもお前は俺だって信じて止めるように諭すのか?」
質問の意図が読めないでいると、突然、俺の首を覆った愁の右手。それには段々と力が加えられていって入ってくる空気が少なくなっていき、ヒュッ、と喉が鳴った。
脳にまで酸素が届いてないような感覚。ふわふわしていて、それでいて苦しい。その感覚が愁に本気で首を絞められてると俺に警告する。
「……ごめんな、何でもない」
「げほ…っ、は…」
俺が本当に呼吸が出来なくなるスレスレのところで、離れていく愁の手。急激に体内へと酸素が送り込まれ、咳き込む俺を、今度はいつもの優しい手で俺を撫でてきた。
「家についたら手当てしてあげる。ごめんね"ルウちゃん"」
ヘラリと向けられた笑顔。今日だけは、この瞬間だけは愁の嘘に無性に腹が立った。
「手前ぇ歯食いしばっとけよ」
「は?…っ゛が…」
あんま手を出すのはしたくないけど、今回はそうしてやらないと気がすまなくて、一発愁の顔に拳をぶつける。
愁はいつだってそうだ。何でもかんでも自己完結。
愁のことは大好きだけど、そこは大嫌い。
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