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「いって…、そんな怒るとこあった?首絞めたから?」
「勝手に無かったことにしてんじゃねぇよ」
俺が殴ったところを擦りながら、へらへらと笑う愁に腹の虫が収まらず、口調がきつくなってしまう。
俺愁と違って鈍いし、ちゃんと言ってくれないと分からない。それでも俺だってちゃんと愁の言いたいこと、読み取ろうとしてて。なのに愁の方は俺が答えを出す前に勝手に終わらせてしまう。愁は人に頼ろうとしない。だからあんま弱味も見せない。
それを見せてくれてるんだから、俺のこと普通の人間よりは信頼してくれてるんだけろうけど、それでも少し位頼ってほしい。俺は愁に一杯助けてもらってんのに、愁の方は本当に駄目になったときしか頼ってくれなくて。
「愁にとって俺は何なんだよ。髪の色、煙草の銘柄、香水髪型服装背丈。俺ってそんなもんでお前って認識してる軽い奴に思われてた訳?」
分かってる。愁が外見をどうにかしようって色々やってきたこと。だってずっと見てきたから。ヘアスタイルの雑誌に目を通したり、服のジャンルも色々と試して、慣れてないくせにカラーコンタクトも一時期付けてた。そんな愁の傍に今までいたからこそ、俺は愁を間違えるはずがないのに。見た目なんかに囚われる訳ないのに。
「俺お前を外見で判断したことねぇんだけど」
俺は愁の中身しか見てない。否それは言い過ぎかも知れないけど。けど"愁"って認識してる基準は愁の中身だ。
「もし俺が、"偽物"に会ったとしても俺がお前を間違える訳ねぇだろ」
「…そう言いきれる根拠は?」
「そんなの要らない」
断言できる決定的な理由、とか。俺のはそんな論理的なものじゃない。だって俺は実際にその人に会ったこともない。愁から聞いてきたその人の人物像と、『愁』って人間。そんなハッキリしてないもので俺はそうだって思ったし、それ以外の答えを出す気はない。
「俺が好きなのはお前であって愁じゃないならどうでも良い」
好きだから、大切な人だから。間違えるなんてあり得ない。興味のない、ましてや一度もあったことない人間とでは愁は違いすぎる。
「本当は優しくて、臆病な所。甘党なのも愁らしいって思うし、愁の全部が好き」
「お前がそうだと思うとこが全部一緒だったら?」
「一緒な筈がねぇだろ。俺の傍にいてくれた、俺が大好きな愁はお前しかいない」
愁がどれだけその人と似ていたとしても、愁は愁でその人はその人。全くの他人なんだから、1つ1つ照らし合わせてみればどこか必ず違うところがある。
実際、愁には唯一否定されてこなかった手先の器用さがある。1つあるんだから、2つ3つ。数が増えてもおかしな話じゃないだろ?
俺は別に、外見にコンプレックスを抱いている訳でもないから愁の気持ち全部は分からないけど、愁は自分の良さにもっと自信を持って欲しい。同じ顔は世界に3人はいるとか言うけど、"性格"が丸々同じ人なんて存在しないんだから。
「…だから次、また下らねぇこと言ったら今度は2発入れてやるからな」
「……お前の拳結構痛いんだぞ」
「じゃあ言うな」
「…嗚呼」
「ふふ、大好き愁」
若干のゴリ押し感はあるが頷いてもらえたから怒るのは止めて愁を抱き締める。
ただ、俺は愁に、愁の良さを否定したままで勝手に完結されたくなかっただけ。その話が終わったんならグダグダ怒っていても何の意味もない。
「…昴流ここ道のど真ん中だけど」
「愁の方が大切だから良い」
「そこは『恥ずかしいから離れる』じゃねぇの?椿ならそうなんだろ」
「う…」
返す言葉が見つからない。
でも、でもさ。涼は付き合ってる人なんだからそう言う意味でしてて、それを周りに見られてるって意識したら恥ずかしいじゃん。涼はまた別。特別だ。
「くく、そう。じゃあ昴流にこうしてもらえんのは俺の特権ってことで」
「んゃ…っ?」
「ありがとな、大好きルウちゃん」
頬にふにゅりって柔らかい感触。それから唇にも。愁の顔が離れると、もう思い詰めてる時にする表情じゃなくなってて、柔らかくなったそれに安堵する。
「お前が俺を見つけてくれるんならもうそれで良いわ」
「…桂木さんは?」
「零…?あいつの感性ちょっと変だから」
「……にゃんこ?」
「そうそれ。俺を猫だと思ってんなら見つけれんじゃね?人間と猫は違いすぎるし青色の猫なんていないだろ」
「ふふ…、そうだな」
桂木さんにツンツンしてるとこばっか俺は見てるけど、ちゃんと信頼しているみたい。愁も俺と同じで付き合ってる人はまた別なんだろうな。
「…でも俺も信じてくれたって良いじゃん」
「え、あっ…ちが、信じてない訳じゃなくて!信じてるから、もしものことを考えたら怖い…だろ」
「考える必要がない」
「…嗚呼、うん。ルウちゃんはそう言う子だったね…。お前がそう言う奴って分かってるつもりだったんだけどなぁ…。俺にある良いところって、俺らしいところって何だって考えだしたらもう、答えが見えなくなってさ。底無し沼」
つまり、俺の愁の好きなところが分からなくて、俺が本当に愁のこと好きだと思ってる自信が持てなくて、それで変な質問をしたってこと、だろうか。
そんなの、聞いてくれたら全部言うのに。…って言うけど、俺も実際問題俺が好かれてる場所なんて分からないし、改めて聞こうとは思わないから、俺が愁の立場だったとしても不安にならない限り聞かないだろうなぁ。
「…しゅーう」
「ん?…っわ?!」
「大好き」
愁の腕を引っ張って腕を絡めて手をぎゅって握る。
愁の良いところ俺は一杯知ってる。それはもう桂木さんにも負けないくらい。桂木さんは桂木さんで、桂木さんしか見れない愁を知ってるだろうけど、俺だって、俺しか知らないところ知ってるって胸張って言える。
だから、また愁が悩まないためにも今まであんま具体的には言ってこなかった愁の好きなところを愁の家につくまで1から全部言うことにした。途中愁は「分かったから止めてくれ」って俺の口を塞ごうとしたけど、無視して言い続けた。
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