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翌日は、『明日疲れちゃうでしょ』とか言っといて俺の方が寝坊してしまった。一度家に帰って昼御飯作るつもりだったのに無理そうだ。ごめん兄貴、涼。コンビニで我慢して。
対して全く疲れを見せない、…否寧ろ逆に艶々してる涼の車で学校まで送ってもらい、人目の少ないところで下ろしてもらう。何でこいつはこんなに元気なのか意味が分からないが昨日一杯寝たからだと解釈しておく。
「昴流、また教室でね」
「ひぁぅ…っ?!」
車からでる直前、ぐい、とネクタイを引っ張られ、ハイネックのヒートテックでも隠れないような場所にちゅう、ってきつく吸われる。俺にはそれが涼が「ショートまで誰にも触られるな」って言ってるようにしか見えない。勿論、えっちな方の意味で。そんなこと絶対ないのに。
「るーうちゃん。おはよ。今日も可愛い」
「ふぁっ ?!」
…否、1人いた。俺が教室に入るなり抱きついてきたそいつだ。あ、でも愁はあの嫉妬しやすい涼が見逃してるからノーカンなのかな…?
「…服の匂いはルウちゃんだけど、シャンプーとかソープの匂いはルウちゃん家のじゃないから朝帰り?」
「な…っ?!」
「それから一昨日と比べて首の、隠せない位置にあるキスマークが3つ増えてるし、目元もちょっと赤い。…昨日は一杯えっちしたの?」
「あ、うぅ…」
触れて欲しくないところをピンポイントで当ててくる。愁も愁で意地悪だ。愁のことだから、どうせ聞かなくても分かってる癖に。俺が恥ずかしくて答えれないの知っててそんなこと聞いてくるんだ。
つかもう何。何なの。何で一昨日のキスマークの数とか、目元の色とか匂いの微妙な変化とか分かるの。怖いこいつ。探偵にでもなれよ。
「首のは…、あー、まだ残ってるのか。ごめんね、結構力入れてただろ」
「んー…。大丈夫、気にしてない」
ぺいっ、とヒートテックをめくられ、丁度隠れていたまだ僅かに残っている絞め痕が愁の目に入るようになり、申し訳なさそうに謝られる。一昨日も大丈夫って言ったのに。それを気にするんなら俺だってだ。思いっきり殴ったから愁の頬の傷が完全に癒えてる訳もなく、唇は切れて端が赤くなってるし、頬も少し腫れてる気がする。俺よりも愁の方が重傷なんじゃないだろうか。
「ごめん…冷やすのいる…?」
「え、否、見た目ほど痛くないしそもそも腫れてんの昴流のせいじゃねぇから」
そう思ったらすげぇ悪いことしてしまったと反省。次からは怒っても殴らずにビンタ位にしとこう。殴るのは駄目。
俺のせいじゃない、って愁は言うけど殴ったのは俺だろう。「俺が怒らせたんだから」とか、そう言う意味で言ってるのか?
「これ、零に上から思いっきり叩かれたから腫れ引いてないだけ」
「え…」
「昴流と揉めた経緯話したら、な。『聞いてる俺が腹立つんだからわんこが怒るのも仕方ねぇな』って。正直零の方が痛かったまでもある」
「へ、へー…」
俺の予想は外れ、思いもよらぬ第三者の出現。
殴るのよりも平手打ちって……桂木さんどんだけの力でしたんだろう。これが愁の言っていた『ゴリラ』に当てはまるのか??
うーん…ゴリラかぁ。俺は桂木さんゴリラってよりはライオンっぽい気がする。自由なところあるし、ネコ科?
「だからそこまで酷くない。俺は痛くねぇし」
「そう…」
それなら良かった。見るからに痛そうなんだもん。
あー…、でも痛くないって言ってもこの腫れ方は冷やした方がいいんじゃないのか…?
「保冷剤取ってくる?」
「冬に保冷剤って自殺行為だと思わない?」
「…うん」
ごもっとも。3月とは言えどちらかと言えばまだ気温は冬だ。保冷剤を当てとくのなんて永遠とアイス食べてるようなものだ。
「お前ら入り口に突っ立ってどうし…うわ?!!」
ぷにぷにって愁の頬を触ってどのくらい酷いのか確認してたら後ろから肩を叩かれた。振り向いたら、何故かその叩いてきた主がもの凄い驚いた声をあげた。
なんだよ、お化けが出たみたいな驚き様。涼に話しかけられたときよりも驚いてたまでもあったぞ。
「えっ怪我…?!大丈夫か?喧嘩?喧嘩売られたのか?」
琉生は驚きとか、戸惑いとか、それらを残したままペタペタと愁の頬を触ってる。
嗚呼…。驚いたのそこか。急にそんなに驚くから何事かと思った。
「喧嘩じゃないよ~。つか俺売られたら逃げるし。痛ぇの嫌じゃん」
「えっでもこれは…??」
「んー…、昴流と零に一発ずつ…?」
「えっ?!………ま、まぁ、お前らでも喧嘩することあるよな…そうだよな…??」
傷跡を付けた主の名前を聞いて、丸くなっていた目を更に丸くさせて、俺と愁を交互に見る。
琉生混乱してる。あ、涼も驚いてたもんな。俺らの間で暴力に発展することなんてないし仕方ないのかな。
俺らがそう言うことに発展したのが現実味がないのか中々良い返事をしない琉生。経緯を詳しく説明してやっと頷いてくれた。それならありそう、と。
「今回のはお前が悪いな」
「あいてっ」
「溜め込む前に何か喋れ」
次いでで、お説教が始まった。
何度もデコピンされ「痛いぃ…」って情けない声を出して必死に琉生の手から逃げてる。
俺を含めたら怒られるの3人目…?でも、怒るのは、それだけ愁が大切だからだ。そう思われるほどの愁にしかない魅力があるって、愁を思ってる人沢山いるって分かって欲しいから。
俺らは人との繋がりを持つのが遅すぎて、自分のことすらも手探りで。余裕がないから周りのことに頭が回らない。涼に一杯言葉をもらうようになって俺はやっとそれに気づけた。
愁も、それに気づけるようになって少しでも良いから誰かに容量を越す前に頼れるようになって欲しいな。
「暴力反対!」
「愛あるデコピンだろ?」
「俺痛いの嫌い!」
「っわ…?!」
指で弾かれてた額を手で押さえながらひゅんっと身軽に琉生から距離を置いて、一瞬で俺の背後に隠れてしまう。俺の背中に隠れて琉生の手を警戒してるところが猫っぽくて笑いそうになったのは愁には内緒だ。
「デコピンが嫌なら猫じゃらしか?」
「俺猫じゃねぇし!」
…俺は耐えたのに琉生普通に言っちゃった。
何なんだろう。琉生ってチンピラとか大魔王様にはビビるのに……Sっ気ある…?気のせいだよな…??琉生もそうなら俺が泣きたい。琉生もそうだったら俺の周り皆サディストになる。
「…今日も仲がよろしいですね。楽しそうで何より」
「ひっ…?!」
「朝礼始めますよ。皆さんも席についてください」
いつの間にいたのか、気づかない内に俺らの隣に立っていた涼が声を発するなり、いつものハムスターな琉生に戻る。だよな、そうだ。琉生はこうじゃないと駄目だ。
パン、と涼が手を合わし、席につくよう催促しながら教卓の方に向かって長い足で床を叩く。
涼が教卓の前に立つと今日もいつもと変わらない1日が始まった。
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