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その1週間後から始まった春休み。かといって何か特別なことがあるわけでもなく、その中身は家事をしたり、バイトに行ったり、涼の家でのんびりしたりと普段通りと言えば普段通りだ。
唯一違ったことがあったとすれば、
「昴流ちゃぁあん…!」
何故か東京にいるはずの人に飛び付かれたことだろうか。
俺の胸の中でふよふよと金色の、兄似な柔らかい髪の毛を揺らしているそいつの足元には大きめの鞄が転がっていて、泊まるつもりでこちらに来たのだと察す。
「…おい、俺の家は宿泊施設じゃねぇぞ」
正月来の弟との対面であっても涼の第一声はそれ。臣がどんなに頼もうとも泊めさせはしないオーラが流れている。後、そのついでで臣から引き剥がされた。
「泊まりは雪路ん家だから安心しろって。兄貴がそう言うのに抵抗ある人間ってのは分かってんよ。それに昴流ちゃんとのいちゃいちゃタイムを邪魔する気はないから。寧ろ一杯して俺に萌を頂戴」
「…じゃあ俺ん家よりも前に雪路のとこに直行しろ」
「そうもいかなくてですね大先生」
急に口調が代わり、涼に良く似た顔を真剣なものに変えた臣は、次の瞬間、家に訪れてきたことに不服そうにしている涼にばっ、と勢い良く頭を下げた。
「勉強教えてくださ…」
「怠いから断る」
まさかの言い終わる前に却下。それでは諦めず涼にしがみついて助けを乞いだす。
「マジでお願い。昴流ちゃんに会いに来たのも目的の1つだけど今回は洒落になんねぇから。俺の学校生活かかってるから。兄貴が頼みの綱なんだって」
曰、進級会議に引っ掛かったものの何とか留年せずにすんだ臣はそれと引き換えに大量のプリントを渡されたらしい。つまりは「今回は見逃してやるけどちゃんと復習して理解しとけよ」 ってことだ。補習じゃないところからして出席日数は足りているんだろう。
「そんなの真とかに聞いとけよ」
「兄貴はさ、姉貴や親父や母さんが教えてくれると思ってんの?」
「ないな」
涼の反論は最もだ。身近にいる人に聞けばいいのに態々東京からここに来て涼に頼むなんて。
それに対して逆の発想で問われたそれに、涼は考える素振りを見せて、首を横に振った。
椿家そんなに勉学のことでは厳しいのだろうか。薫さんとか、聖人さんは時間的に無理かもしれないけど、真さんとか教えてくれそうだけどなぁ…。
「家は臣を除いて全員理系で文系の脳は理解できない上に教えれる科目も限られてくる。でもそれ以前の問題で"説明ができない"」
「…?」
「あの3人基本的にフィーリングだから教えるのに向いてないんだよね」
「嗚呼…」
2人に説明されやっと理解。
つまり、椿家は天才肌の人が多くて、その上臣と選択科目が違うから教えようにも教えれないのか。そこで、どの科目もオールマイティに対応できる唯一椿家で教えれる、教師って職業に就いてる涼に助けを求めたって訳だ。
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