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そうして始まった涼の個別教師。涼が休みの日には昼前から臣が来て、夕方には雪路さんの家に帰っていく。涼は有給消費したりで休みが元から多かったみたいだったから、涼の教え方が上手いのもあるんだろうけど、期限って不安を感じさせないペースで大量の空白は埋まっていった。
「終わっ…た…」
臣の訪問から1週間が経ったその日に、遂に課題から解放された2人は疲弊しきってぐったりと机に突っ伏していた。
涼が相手にできなかった日もあるから実質は5日。その短期間であの分厚い冊子をやりきるとは。思わず称賛の拍手をしてしまった。
「マジでありがと兄貴…持つべき神は兄貴だったわ…」
「…嗚呼」
涼が神様に昇格してしまってる。その神様は言葉を発するのも疲労から難しいのか、いつもなら何か臣に対して嫌味を言うところなのに、ただ相槌を打っただけだった。
「兄貴にお供えもの」
「ん…?」
その疲れきった体に鞭打って、体を起こして鞄の中を探りだし、1つ袋を取り出すと言葉の通り最後の気力を出しきった臣はまたぐったりとしてしまった。袋に包まれた何かを渡された涼は体を起こすことすら面倒なのか手だけ動かして袋の中身を確認してる。
「…今回は許してやるわ」
「ありがとうございます」
黒色の毛玉に涼の唇が緩む。臣が持ってきた報酬は小さいぬいぐるみ。犬?狼?なのかは人形だから分かりにくいが黒色だし狼なんだろう。どんよりとしていた涼の周囲の空気が瞬く間に澄んで、花が咲く。兄の好みなんて把握済みなようだ。
それからというもの2人の動く気配はこれといってない。本当にしんでるんじゃないかと思ってしまうくらいに指一本たりともピクリともしない。
寝ているのか、ただ突っ伏しているのかも分からないが、疲れてるのは確認しなくとも分かるから起こしはせずに毛布をかけて、台所に向かう。今4時だからのんびり晩御飯作ってたら良い時間になる筈だ。
今日は…んー、疲れてる時に脂っこいのはしんどいだろうし、あっさりめ?それなら和食にしょうかな。
「すーばる」
「っひ…?!」
味噌汁の具材を切っているときに、突然背後に気配を現した誰かに腰をホールドされて、耳元で低いけど甘ったるい、頭に響いて残るあの声で囁かれる。吃驚して、包丁がまな板のうえにぽとりと落ちる。悪戯を仕掛けてきたそいつに「驚かすな」と文句を言おうと振り返ったら…、
「…え」
そこに立っていたのは俺が予想していた人ではなかった。
「クク…、昴流ちゃん引っ掛かった。似てるだろ?」
してやったりと言うかのような笑みを作って驚きを隠せない俺の頬をつついてくるそいつは、絶対涼だろうと思ったのに、その弟の臣の方だった。
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