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鍋物だったから外食で食べ残すことが多い俺でも食べやすい。食べる量を好きに調節できるし俺が食べれない分も3人が食べてくれるから。
俺のお腹が膨れる前に鍋は空になり、締めは雑炊にすることにした。
「おい、卵は入れたらかき混ぜるだろ普通」
「どっちでも良いだろ別に面倒臭ぇ」
ご飯を入れて溶き卵を入れて…、それで蓋を閉めようとした兄さんに兄貴がもの申す。が、兄さんは無視して鍋をクローズ。卵のあり方で揉めるって。目玉焼きにソースかけるか醤油にするかの次元での争いだな。
俺も兄さんと同じでどっちでも良いかなぁ…。だって材料同じなら見た目違うだけで味は一緒だろ?
あ、目玉焼きはそうもいってられないから俺は醤油の方が好き。
「…あ、おい親父。もう開けんの?」
「……む」
兄さんと兄貴が卵のことで言い合っている中、父さんがマイペースにも2人の会話は興味なさそうに閉められた鍋を開けて卵を確認している。その時父さんの眼鏡が一気に曇って、父さんの眉間に皺が寄ったのを俺は見逃さなかった。そしてパタリと蓋が再び閉じられ、兄貴が中を確認するように父さんに命ぜられた。
「親父眼鏡邪魔なんじゃねぇの?昔みてぇにコンタクト戻したら?」
「もうコンタクトは無理ですね、一度眼鏡に戻してしまったら違和感が強い」
「でもそれを我慢したら前が曇らなくて済ー…」
「私がいつ、眼鏡で困ったと言いましたっけ?」
兄貴も、父さんの眼鏡が曇った瞬間を見たらしく、兄貴に確認させ、自分は鍋の煙から避難した父さんに兄貴がぷぷぷと笑う。兄貴が父さんを弄ると、父さんの声が少し、力強くなる。その瞬間兄貴は「何でもないっす」と言ったっきり黙ってしまった。これが噂の『怖い』父さんって奴?
それにしても、父さんがコンタクトつけてた時期があったなんて驚きだ。俺が記憶してる父さんはずっと眼鏡だったから、コンタクトだったの俺が産まれる前とかなのかな。眼鏡じゃないところなんて想像できない。風呂入るときは眼鏡外すからそこは見たことあるけど、そういうのじゃなくて日常的に?まぁ、慣れ不慣れは誰にもあるもんだからそこでコンタクトにしろって強制はしないけど、気になるな。兄さんも。
俺ん家って酒と同じで視力も1か100。俺と兄貴は裸眼でも見えるけど父さんと兄さんは駄目らしい。てことは母様の視力は良かったってことだろうか。
「……、昴流?」
気になって仕方がなく、雑炊を食べようとする度に眼鏡が曇りうざそうにしている父さんから、視界を奪う。レンズの度がキツく、間近で見たらくらくらしそうだ。
眼鏡を取った父さんの目元は兄貴や兄さんに良く似ている。下睫毛が長め。兄貴の色素が薄いのは父さんから来ているのか、瞳は茶色なんだけど、薄く緑が混ざってる。
「父さんってハーフとかクウォーター?」
「まさか。外国の血なんて一滴も混ざっていませんから偶々ですよ」
「へー…俺父さんの目好き」
そこまで断言できるのは不思議だが、兎に角父さんのこれは遺伝的なものではないらしい。この目の上にレンズが被せられるって、何だか勿体ないなぁ。
「くす、私も昴流の目は好きですよ。七瀬に良く似ている」
「んー…っ」
父さんの手がするりと俺の頬を撫でて、その手は頬に触れたまま指だけ動いて目尻に触れた。
「七瀬も虹彩は黒かったですね。まぁ彼女はたれ目でしたが」
「んぇ…っ?」
「ふふ…、お前は本当に上2人と比べて可愛らしい」
びろーんって父さんに頬を伸ばされる。父さんは俺の頬を触るのが好きなのか、それとも顔の部位で触りやすいのがここなのか。怒ってるときも頬引っ張ってきたもんな。…あれは引っ張るじゃなくて"つまむ"か。
平生は無表情で喜怒哀楽なんてあんまり見せない父さんが微笑む。愛おしそうに、そして懐かしそうに。俺に似てると言う母様を思い出していたんだろうか。
「どうせ俺らは親父に似たよ」
「良いんだよ、母さん似はハニーちゃんだけで」
「お前らが七瀬に似ても可愛いと思わなかったと思いますが」
「うっわー、流星ちゃん傷ついた」
父さんが『上2人に比べて可愛い』って俺に言ったのに反応しているのか、反論し出す2人。父さんはきっぱりと「可愛いところなんてない」と断言しているが、俺は可愛いところもあるんじゃないかなぁって思ってみたり。あー、でも2人は父さん似だから、可愛いってよりは格好良い?俺としては羨ましい限りだ。俺も格好良いって言われてみたい。
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