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「ーー始業式を始めます。一同黙想」
春休み明け。新しいクラスも知らされることなく始まった始業式。司会の合図と共に静かになった体育館内。俺の前の列で黙想…ではなく、もう既に寝そうになってる愁が見えた。
愁、それは黙想じゃなくて睡眠だ、と突っ込みを心の中で入れていると、黙想を止めるよう指示があった。愁の目は開かないし顔も伏せたまま。お休み。まぁ、ほら愁の場合来ただけでも頑張ったから。式に五月蝿いっていう教頭辺り許してあげて。
そっからは長ったらしい校長の話とか、生活課からの話とか、新年度ってのもあって後期の始業式よりも子守唄な話が多かったもんで俺もうとうとしてきた。
睡魔に抗うことは難しく、半分…否半分以上記憶からすっこ抜けて、気がついたら式が終わっていた。教室に戻る生徒も見られる、ざわついている館内の中、斜め前を見ると愁は爆睡していた。…あ、耳にイヤホン付いてる。お前寝る準備万端なんじゃねぇか。
「しゅーう。愁。終わったぞ」
「っ、ぁ…、…っ!…あ、昴流か」
愁を後ろから抱き締めて、聞こえるようにイヤホンを取って耳元で式の終わりを教えると、小さく声を漏らし、その直後ビクリって体が揺れ、愁が勢い良く背後を振り返った。こんな反応を見せるなんて珍しい。相当熟睡してたのか?
「大丈夫?」
「あー、うん…。ちょっと擽ったくて吃驚しただけ」
「?…嗚呼、ごめん」
なるほど、耳元で言ったのが駄目だったのか。…あれ、こんなに愁って耳弱かったっけ。
「愁昔耳弱くなかっただろ」
「っ、ひ…、昴流それ、無理」
耳たぶを撫でると、愁の髪が揺れ、顔をそらされる。本当に弱いらしい。俺も耳は触られるの苦手だけど、俺の弱さと同じくらいなんじゃねぇかなぁって思ってしまうくらいの反応。いつの間にこんな弱くなったんだか。
愁の弱いとこ発見…っていうか発生?今度意地悪されたらここ擽ってやることにする。
「ほら起きて。式終わったよ」
「えー、折角気持ち良く寝てたのに…」
もう一度、式が終わったことを教える。皆がぞろぞろと体育館を出ていく中、愁は眠たそうにして動く気配はない。
「もー…」
「起きねぇと担ぐぞ?」
「へ…?…っひ…ちょ、ま…ルイちゃんもう担いでる。無理高い待って待って待って!!」
どうやって愁を動かそうかと悩んでいると、愁の前の列からひょっこりと手が伸びてきて愁の体が宙に浮く。琉生の肩で担がれた愁。…うわぁ身長がある奴にされたら怖いだろうな。しかもあんな軽々しく持ち上げられるって。
そのスリルのお陰で目が覚めたらしい愁は「下ろして!」と足をばたつかせ、地に足がついた時はもう生きている幸せを噛み締めるような、そんな顔をしていた。
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