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英語の授業が終わりそうになってきた頃、何本目かの煙草を床に擦り付けて火を消すと同時に、愁がぽんぽんと俺の頭を撫でてきた。
「ごめんな、少し落ち着いた」
素での口調だからまだ完全に落ち着きを戻したと言うわけではなさそうだが喋れるところまでにはなったようで、俺もそれを確認すると口を開いた。
「もうちょいここにいる?」
「あー…、今授業?」
「英語」
「んじゃあ終わるまで」
「分かった」
とはいっても今の授業は後5分ほどしかないから今出ようとチャイムが鳴ってから出ようとそこまで変わりはないんだけど。
「愁朝生田のこと嫌い?」
「……あ?誰?そいつ」
「赤わかめ」
「…嗚呼、あいつ」
どうやら嫌いすぎて自己紹介は一応してくれていたが名前を覚えてなかったらしい。つーか覚える気がない?
落ち着いてきたなら大丈夫だろうと思ってしたその質問に、朝生田が誰なのか分かると考える素振りを全く見せることなく「"落としたい"」と即答した。こりゃあよっぽど気に入らねぇってことな。
「出会い頭に挑発されたから?」
「それもあんけど、そうじゃねぇ。琉生にも言っとくけどあいつの前で油断すんなよ」
「…何で?」
愁の朝生田に対しての感情で一番気になっているところを問うた。何で、ここまであいつを目の敵にするのか。涼も朝生田のことは苦手がっていたけど、何度も言うけど愁のは苦手意識とは別に敵意もあって。俺は愁がそれを向ける意味が分からない。挑発されたから?否、違う。そんなので愁がここまでピリピリしたことはない。
「あいつの目ェ見てみろ。へらへらしてる癖に全然笑ってねぇ。"同じ"だから分かるんだよ。椿も気づいてんじゃねぇ?」
「…"笑顔で何かを隠してる"」
俺も、それは何となくだけど感づいてた。ずっと笑顔の朝生田。嘘が上手な2人を毎日見てきたからその笑顔の裏に何かある気はしてた。でもそれだけなら。本当にそれだけなら愁が最初涼に見せてた態度よりも酷くならない筈であって。
「嗚呼、それだけなら良いんだけどな」
「?…っ、ぁ…?」
するり、と愁の手が突然俺の首に触れ、軽く首を掴まれた。愁の目が氷みたいに鋭く、冷たくなってぞくり、と背筋が震える。
「しゅ…?」
「あいつの目は獲物を捉えた獣だぞ。上手く隠してるつもりみてぇだけど内側は"こんなん"だ」
「…え、そうだった?」
「間違いねぇよ」
それは全然気づかなかった。中学の頃はそう言うのには敏感で、すぐに気づけてた筈なのに。つか、絶対気づけるって自信もあった。…やっぱり、感覚的なものは覚えていても時間がたつと鈍っていくのかなぁ。
「いつ食らいついてきてもおかしくねぇよあの目は。…それに」
「…それに?」
「……"赤"絡みは良い記憶がねぇ。特にお前の、な」
「…嗚呼、うん」
赤。思い出せばそうだな。
1年の時、レイプしてきた奴は赤髪。刺してきた奴も赤髪。リンチしてきた奴は赤の武装集団。俺が面倒な奴に絡まれたら大抵相手は何処かに"赤"がある。俺はここ数年ことごとく赤色に嫌われているらしい。
「今回は敵になるか味方になるか分かんねぇけど気を付けた方が良い。…油断、すんなよ」
「ん」
愁の忠告にこくり、と小さく頷いた。
人の感情を揺さぶるのが得意な愁。"そう言うこと"には俺よりも長けてる奴が危ないって判断して、警戒してんだからそれが正しいんだと思う。
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