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熊のケーキだけは凄い気になる。正直、それ目当てで誘いに乗っても良い。つか行きたい。…こいつが現在進行形で警戒対象でなければ良いのにと思ってならない。
「ルウちゃん本気?」
「だってくま…」
俺の決意が弱いんじゃない。思ってたよりも完成度が高くて可愛いのが悪い。
「…嗚呼、これ俺警戒されてるな。別に何もしねぇよ」
俺らが頷けない理由を流石に朝生田も察したらしい。変わらない笑顔で自分に害はないと言ってくるため心の内で何を考えているのかは不明だ。
「どうだか」
「本当っすよ。もし狂ちゃん狙ってんなら俺はここに来ずに放課後狙って誘うな。そうじゃなければ悪魔さんが後をついてきそうだ」
確実に、誰にも尾行されることなく俺の2人きりになれる方法をとると断言する朝生田。それもそうだ。俺に何かするつもりなら自分が警戒されてんのを分かってて「俺は今から一緒にここに行きます」って言っているような行動は控えるのが普通だ。しかも、愁は俺以上に朝生田を警戒してる。愁も一緒に行くって言っていた可能性もあったわけだ。そんなの面倒だし、俺だって朝生田が言うように相手が1人きりになるのを待ってそれから誘う。
「だからさぁ、今日1日、1時間位。あんたの恋人貸してくんないすか?怪我はさせねぇから」
「それを俺が信じると思ってんのか?」
「思ってないから言ってるんですよ。あんたに、直接」
バチバチと2人の間で火花が散る。愁は隠すことなく殺気すらも飛ばしてる。それでも臆することなく「何もしない」と言いきる朝生田。度胸があるのか、命知らずなのか。どっちかは分からないが、でも、俺は朝生田が言っていること全部、嘘はないように聞こえて。今回は2人きりで行っても大丈夫かもしれない。今回だけは。
「行く」
「マジ?やった!」
「は?馬鹿昴流本気?」
「ばか…」
愁にきっぱりと馬鹿って言われた。馬鹿…。馬鹿じゃねぇもん。熊につられたとかじゃねぇし。ちゃんと考えて頷いたもん。
俺が誘いに乗ったら朝生田がガッツポーズをして喜ぶ。やっぱり俺にはこれに嘘があるようには見えない。
「ちゃんと連絡するから…」
「5分置きにか?」
「え…、俺ずっと指動かないと駄目じゃんそれ…」
要求された連絡頻度が高すぎる。俺愁みたいにぴゅんぴゅんってすぐにメール打てない。5分置きにメールするとか、それ俺食べてる暇ないから無理だ。
「できるだけやるようにはするから…」
「…今回だけな」
大分間が空いて、深く溜息をついた愁は渋々、と認めてくれた。
「…ただ、油断は怠るなよ」
「分かった」
耳打ちするわけでもなく、堂々と朝生田にも聞こえるようにそう言ったのはもしもの時のことを考えてのこいつの行動の抑制が狙いなのか。…否、愁の場合はそれもあるかもしれないがただ純粋に朝生田のことが気に入らないから気を使う必要がないと判断したんだろうなぁ。
「んじゃあ狂ちゃん!放課後迎えに行くから!」
「ん」
来たときよりもるんるんで。スキップして自分の教室に戻っていった赤わかめ。
「…一応椿先生に昴流が熊につられて朝生田の誘いに乗ってケーキ食べに行きましたって伝えとかないとなぁ」
「え゛っ」
何、その誤解を生むような言い方…俺が熊目当てでつられた意思が弱いやつみたいに…。止めてそんなこと報告されたら、涼の耳に届いたら確実に俺怒られる。
「でも、事実だろ?」
「え、ちが、」
「結果としては違わないよね」
「……うん」
2人に笑顔で圧をかけられ、頷くしかなかった。誘いに乗ったの間違ってたかもって今後にある大魔王様降臨イベントを想像すると後悔した。
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