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朝生田はケーキを食べながら兎の可愛さについて事細かに俺に説明してきたんだが、俺はどうしても先の、あの朝生田の人が変わったような雰囲気が忘れられなくて、会話がいまいち頭に入ってこなかった。
「下ネタだった」と朝生田は言うけれど、それには納得してやるけど、あれはどう考えても殺気以外に他ならない。少し、誤魔化された気持ちが残ってしまう。
「…狂ちゃん?」
「あ…何?」
「俺の話あんま聞いてないよな」
殺気の意味を考えていると、朝生田が話を中断して俺の顔を覗いてきた。
「…俺、そんな怪しいっすか?」
「え、あ、いや…」
「そんなことはない」と否定しようとしたが言葉がつまる。図星だった。だから謝罪の言葉を言い直した。肯定の意味を込めて。
「だろうと思った。狂ちゃんも、ルイルイも何だかんだで俺を警戒してんからな。何?どこがそんなに怪しい訳?」
今言えば誤解を解消する、と言っているようにも取れるその質問。何処が変なのかって、そんなのお前のその、内面が全く見えない顔だよ。…なんてまぁ、本人にドストレートに言える訳もなく。
「お前何考えてるのか分かんねぇから。…秘密めいてる?」
「えー、そうっすかねぇ…?」
顔って点は伏せて、正直に話した。どうせ警戒してんのはもう朝生田は知ってるんだ。言ったって言わなくったってそこまで変わりはない。
朝生田は俺が言ったことに思い当たる節がないのか首を傾げた。何か隠している気は更々なく、オープンにしているつもりらしい。
「まぁ…言ってねぇことはあるけども」
「何?」
「やーそこまで大したことじゃないんすけどね」
1つ、考えに考えて心当たりがあるものを見つけたようだがそこまでのことではないような言い方だ。
俺が求めてる答えとは恐らく違うだろうと言う類いのことを何度か繰り返し言うと、朝生田はそれを口にした。
「俺1年ダブってるんだよな」
「…は?」
「だから普通は今高2?」
ーな?下らねぇだろ?ー
予想斜め上の告白にぽかん。否、全然下らなくないですけど。そりゃあ期待していたものとは大幅に違いましたけれども、相当な告白だぞそれ。は?何こいつ留年してたの?
「ダブリって表現はあんま適切じゃあねぇけど。俺本当は中卒だったんっすよ。ちょいと事情があってそん時は進学を諦めてた。んで、去年の今頃は普通に働いてて」
「…えっと」
留年よりも濃いの来たんだけど。そりゃあまぁ確かに高校は義務教育じゃないんだし何歳からでも一応は自由に行けますけども。じゃあ何だ。こいつは中卒だったけど何か訳あって高校進学に道を切り替えたってことか??
「でもそこって所謂漆黒企業で。割に合わねぇと思って1ヶ月位で止めた。まぁ、個人的にごたついてて余裕がなくなったのもあんだけど。んで、適当に過ごしてたら父親に結構言われたんで…まぁそこら辺は適当に想像して下さい」
「あー…うん…」
会社止めて、やることなくなって、少し余裕ができてきたから高校に入学したって言いたいのか?この男は。変わってんなってのが素直な感想だ。
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