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休憩しようと立ち寄ったカフェ。
カフェのあの、注文するときの文字の羅列?が未だに良く分からなくて、それをすらすらと読み上げてる涼が呪文を唱えてるように聞こえてしまう。
否お前優さんのとこでバイトしてんじゃんって言われると否定できない。でも、ほら、あれだ。飲み物は優さんの担当だから。俺はあくまで料理の手伝いだし。
「すーばる。席取ってきて?」
「え、あ、うん。どこら辺?」
「昴流が好きなとこで良いよ」
「分かった」
混んでるからか涼に任務を言い渡される。辺りを見渡しても中々空いてる席が見つからないので奥の方まで探しに行く。
それでも見つからなくて、結局空きそうな席を待つことに。こう言う待ち方って席がないんだから仕方のないことだけれど申し訳なくなってくる。早く席空けろよって急かしてるみたいで。
数分か待ったら席が空いた。そこに荷物を置いて、涼がまだ来てないからレジの方へ探しに行く。
レジの列から少し離れたところに涼はいた。高い身長な上に地毛にしては色素が薄めな茶色の髪をしている涼は見つけやすい。
「りょ…」
「お兄さんもうすぐで30なの?!見えない!」
声を、かけようとした。んだけれど、俺の声は女の人の声に遮られてしまった。まだ涼とは距離があって良くは見えないけれど、人混みの隙間から背が低めの、女の人2人に話しかけられてるのが見えた。
涼は笑顔でその人たちと話している。その笑顔は、よく知っている。学校でもする猫被りのそれ。
涼は外に出て、1人になると良く声をかけられる。昔は全然なかったのに、最近になって増えてきた。そりゃあ涼はスタイルも顔も良いし、声をかけられるのは仕方ないけど、それも確かにあるんだけどそうじゃなくて。
涼が声を良くかけられるようになったのは涼の雰囲気が関係してるのかもしれない。涼は前よりも表情が豊かになった。可愛らしく笑う回数が増えてきた。俺が変化を感じているんだからそれ以外の人もきっと何か感じているだろう。
涼の中で何かが変わっていっていってるのは良いことだと思うし、見かけ上は楽しんでるように見えるこれも偽りなんだと、理解もしている。
なのに、いつもこの光景を見てると胸がズキズキとする。
この痛みはきっと、嫉妬であると同時に不安の現れでもあるんだと思う。バレンタインの時と同じで、涼の一番になる可能性のあるものが嫌だ。それから、そう言う意味で俺以外の人が触れているのも。
最初はこんなのじゃなかった。付き合い出した初めは、割りきれてた。それなのに、嫌だって思うことが独占欲と一緒にどんどん増えてきて。気づいたら凄ぇ重たい奴、みたいな思考回路になってて。
涼は俺に素直になってと言うけれど、こんなの、全部涼に喋って涼がいい気分になる筈がなくて。
だから、俺は逃げることを選んだ。きっとあそこに入っていったら余計なことを口にしてしまうだろうから、とった席に戻って、涼を待つことにしようと決め、体の向きを変え、足を動かした。
「昴流」
なのに、俺を呼び止める涼の声が聞こえて、コツリコツリと俺に近づいてくる革靴の音。トレイを持ってない方の手で俺の頭を包んできた。
「連れがいるので失礼します」
そう、涼は先まで話していた人に告げると、俺の肩を抱き寄せて歩き出す。「ごめんね」と耳元で呟かれて、涼は悪くないのに申し訳なくなった。
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