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朝生田への警戒が強まって、にも関わらず朝生田はその雰囲気を感じ取ってる筈なのに、いつものように俺らのところに遊びに来る。その行動に裏がないように俺には見えるけど、今となってはそれが"策"なのかも分からない。朝生田と初めて会って1ヶ月半、朝生田が入学してから2ヶ月。既にもう6月に入ったというのにやっぱり朝生田は動きを見せない。
「暑くねぇの?狂ちゃん。夏服は?」
それは今日も同様で、朝生田は俺の前の席の奴が教室を離れているのを良いことに、そこに座っている。
朝生田がぺらぺらと俺のカーディガンを摘まんで服の厚さを強調してくる。それに「暑くないからこれで良い」と返す。昔と比べて寒いって思うことはなくなったけど、この格好でい続けたせいなのか、薄着でいるよりこっちの方が落ち着く。唯一薄着なのは夏の風呂上がり位だと思う。
「へぇ?てっきり俺は刺青入れてんのかと思った」
「え、ないない」
刺青って。兄貴はいれてるけど俺はいれてないぞ。兄貴と違って明確な彫る理由もないし。見当違いな発言に手を振って否定。
「なーんだ。じゃあ噂は本当にただの噂だったのか」
「噂?」
「昔っからあったな。『狂狼が肌を見せないのはやばいのを隠してるから』…ってよ~。俺もちょーっと気になってたんすよ?」
俺の反応に朝生田はつまらなさそうな顔をする。刺青の話が出てきたのはその、噂のせいらしい。俺はそんなこと耳にした覚えがないので琉生と愁をちらり。琉生に小さく頷かれたから少なからず噂として存在はしていたらしい。
「いれてんなら見せてもらおうと思ったのになぁ…」
「…刺青好きなのか?」
「刺青が好き、っつーか可愛いのと綺麗なのが好き?」
「…はぁ」
見たかったってことは刺青が兄貴と一緒で好きなのかとも思ったがそうではないらしい。この言い方では刺青、ではなくて刺青がある肌が好き?しかも、こいつの感性でトータル評価が綺麗、可愛いに分類されるもの限定で。つまりは可愛ければ何でも良い、ってことだろう。
「狂ちゃんは顔も可愛いじゃん。肌も白くて…椿」
「…っ、?」
「赤椿とか似合いそうだなぁ」
『椿』って言葉に思わず体が反応してしまう。涼のことかと一瞬思ったが、ただの花の椿のことだったらしい。
何だ、吃驚した。そう、だよな。普通ここで涼が話題になることなんてないよな。そもそもこいつは涼を『イケメン先生』って呼ぶ。だから『椿』で涼を連想させる必要はなかったんだ。
…でもこれは仕方ないよなぁ、『椿』って名前で関わりがある、しかも恋人である人間がいるんだから。でも、変だ。『椿』って言葉を出す間に違和感。
「ま、いれたら見せて?」
「いれねぇと思うけど」
「えー、残念。…まぁこればかりは好みによるかぁ…しゃあないな」
その違和感を残したまま、朝生田は不気味なほどに変化を見せない笑顔が張り付いた顔で、刺青の話題を終わらせた。
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