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一体、なんでそんな怪我が。普通じゃあできないもの。先日まで怪我を負っていた朝生田。それ関係かとも思ったけれど、違う。それにしては傷痕が"綺麗すぎる"。そこはもう回復して皮膚が出来上がってしまってる。この数週間で出来るようなことじゃあない。
何なんだ、本当に。こいつを知れば知るほど分からないことが増えていく。普通は逆じゃないのか。減っていくんじゃあないのか。残念ながら朝生田は普通でいさせてくれない。
「え、何、どうした?」
「…いーや?何でも。狂ちゃんの勘違い」
俺らの空気に不審がった琉生に、本当に何でもなかったような笑顔を朝生田は振り撒いた。
少し、こいつが怖いと思った。人は得体の知れないものには警戒するが、それには恐怖も混ざっているんだと思う。こいつの背景が、真っ黒に塗りつぶされてるからこその、恐怖。それは時間が経てば経つほどに闇を深くさせていって、本能的にこれ以上干渉するなと脳が警告を受ける。
恐怖なんて今まであまり感じたことがなかったのに。ゾンビものの映像は怖いとは思うけど、そういう恐怖じゃあなくて。
どう言えばいいんだろう。涼が切れて、怒られてる時みたいな、そう言う生きた心地のしないもの。それに近いかもしれない。それはきっと知らず知らずの内に頭が最悪のケースを思い描いているから。自身がこの闇に捕らわれるんじゃかいかっていう。
「…狂ちゃーん?」
「え、あ…?」
「ぼーっとしてるけど大丈夫?」
朝生田に呼ばれ、自分の世界に入ってしまっていたことに気づく。そっちに気をとられてしまう位に、脳がこいつのこと危険だとみなしているということ。兎に角、そろそろ手を打たないと。こいつのこと信じたいとか、そう言うこと言えなくなってきてるかもしれない。
「吉柳~準備手伝って。重たい!」
「え、あー…今行く」
朝生田との会話に困り、言葉に詰まってしまって、沈黙が流れようとした時、グランドの、俺らが今いる反対側あたりから琉生を呼ぶ声がした。琉生は行かないわけにもいかないからそっちの方へ行くことに。その直前、俺の耳元で「気を付けろよ」と言われ、小さく頷く。前みたいに大丈夫だとか、気にしすぎだとかは言えなかった。
人は無知に怯える生き物、らしい。
2人きりになった瞬間、先までは大丈夫だったのに、一気に緊張感が増した。
「…なぁ、俺本当何もしねぇからさ」
「……っ?!」
「頼むよ狂ちゃん」
俺が警戒していると、朝生田も感づいたのか自分からそう言ってきた。今となっては信じられない言葉で、そう返答する気で朝生田の方に顔を向けた。
ー何だよ、それ…ー
俺が顔をあげたら、そいつは苦しそうな、悲しそうな…そんな顔をしていた。
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