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運動場に戻ったら、もうリレーの順番確認をしているところだった。涼と思っていたよりも話しすぎていたらしい。今年も去年と同じ種目のアンカーを涼が撮りたいからと言う理由でなった俺。走り終わって教師席に目をやると満足そうにカメラを数台腕にぶら下げて微笑んでるそいつがいた。あのカメラは撮るのを使い分けているんだ、きっと。趣味と仕事、みたいな。器用なもんだ。
そして騎馬戦も無事に終わり、あっと言う間に閉会式になった。
体育祭中は始まる前以外に特に朝生田のことで気になることはなく。寧ろこいつは楽しんでいた奴上位だったように見える。だるいだるいと言う奴ー決して自分のことを言っている訳ではないーもいる中で、曰初めての体育祭だったからなのか、はっちゃけてた。二人三脚とか、相方と笑いながら走ってたし。まぁあれほど自信満々だったけど結果が4位って中途半端なものだったのは置いといて。
遠目に見たそいつは、普通の男子高校生。俺が近くで見ていた時の、背景が闇に染まったそいつとは別人だった。いつもああなら俺も朝生田のこと信じてやれるんだけどなぁ。
閉会式も終わって解散となり、教室で制服に着替え直す。今日は父さんたちと一緒に帰るついでにご飯を食べる約束だ。今日は兄貴のリクエストで最近話題のレストランらしい?昔は外食なんかしなかったのに、父さん兄さんの誤解が解けてからは家族皆で良く行くようになったと思う。
「だか……、…は……」
階段を降りて、突き当たりを曲がろうとしたとき、壁の向こうから声が聞こえた。抑揚のない威圧感すらある機械的でもあるその声は、以前聞いたもので印象に強く残ってるから、良く聞き取れなかったけどすぐにそれが朝生田だと分かった。
朝生田以外の声は聞こえないし、恐らく電話だろう。これは、普通に前を通り過ぎて良いんだろうか。あの時みたいな冷たい声をした朝生田とは、あまり関わらない方が良い気もする。ここで電話が終わるまで待ってるのが正解?
「俺にも都合があるって何度言やあ良いんだ?あ?うちの"掟"、忘れたとは言わねぇよな。これ以上の詮索は"裏切り"と見なすぞ」
ー何の話だ…?ー
立ち聞きするつもりはなかったんだけど、どう動こうか悩んでいたら聞こえてきた単語。
掟、裏切り。俺には無縁の単語だけども、その言葉が出てくるからには朝生田はどこかの集団に属しているんだろう。その集団は、恐らく、舞那ちゃんが言っていたことにもあった、族関係のもの…なんだと思う。朝生田のこの話し方からして善良な集団であるのは、まぁまずないだろう。
「てめぇらに不満があんのは分かってる。だから俺はその都合をひん曲げてでもてめぇらの相手をしてやった筈だが?なぁ?俺を疑うのは筋違いじゃねぇか」
この言い方からして、「相手をした」のはつい最近?前の電話の直後だろうか。俺が「都合が悪い」と朝生田が電話相手に言っていたのはそこしか知らないからどうともいえないけど。もしそうなら、朝生田が学校を休んでいた理由も内部争いで説明がつく。
…と、ここまでは朝生田の発言から朝生田の裏事情を推測することができた。けど、次の発言で俺の体は凍りつく。
「俺の指示は変わらねぇ。"最恐が見つかるまで全員待機"」
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