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「俺の指示は変わらねぇ。最恐が見つかるまで全員待機」
「ーー…っ!」
「さいきょう」サイキョウ最強最きょう最恐。
俺と愁に、勝手につけられた総称。あだ名。
言い方的に俺らを狙ってるのか?でも待機って何だ?お前は、俺らのことを知ってるだろ?もう、見つけてるじゃないか。どの学校に通っているのかも、大体なら住んでる場所も。バイトをしてることだって。
本能が今すぐここを離れろと警告する中、朝生田が言った言葉を意味を理解しようとぐるぐると頭を回す。そして、ふと思い出した。今日言っていた朝生田の言葉を。
ーそういう、ことかー
「朝生田茜でいる限りお前に危害は加えない」あいつはそう言った。それはつまり、"朝生田茜"としている時に俺や愁と会えば電話越しにいる仲間に報告はしないが、そうじゃないとき…”族の一員”としているときに会えば、報告するって意味だったんだ。
これは結構、いやかなり。俺がここにいるのって危険?現に今のこいつは"朝生田茜"じゃあない。こんなとこで立ち止まっていずに、別の出入り口に回った方が良いか?
「明日いつもの場所にこい。そこで話は聞いてやる。だから切るぞ」
そうやって考えている内に、そこで会話は途切れてしまった。
まずい。もしこっちに来るなんてことがあればまずい。頼むから別のルートを通ってくれと、朝生田の次の行動を念じてみる。
「…先に裏切ったのはてめぇらの方だろ」
「……?」
ぼそりと呟かれたそれが、俺にははっきりと聞こえた。それが意味するのは分からない。が、内部でごたついてることは間違いないんだろう。
否、そんなことよりも。ここをどう抜け出すかを考えなければ。
「おい茜~。まだいたのか?」
「ん…?嗚呼…、やー、ちょっと親父から電話かかってきてよ。悪ぃ悪ぃ」
動けば足音でばれる、動かなければ対面してしまう可能性が高い。どうするべきか、頭をフル回転させていると、聞こえてきた新たな声。確か、朝生田と同じ1年で俺と同じブロックになった人の中にこういう声の奴がいた気がする。
壁があって見えないが、どうせ朝生田はお得意の笑顔を貼り付け、嘘を並べているんだろう。
「まぁ丁度良かった。今日打ち上げいかねぇ?」
「え、俺行って良いの?」
「だから誘ったんだろ…?」
「やった!行く!サンキュ、ダーリン~!」
「うわきっも…」
打ち上げと言う単語にはしゃぐ朝生田の声。俺はこいつの顔が見えないから、今どんな顔で、この声音でそう言ったのかは分からない。声だけだと本当に喜んでるように聞こえるんだけどな。まるで、初めてのことを経験した子供のよう。声だけは。
朝生田の同級生が来てくれたお陰か、そのまま会話をしながら2人の気配は恐らく出入り口に向かったんだろう、俺から遠ざかっていった。声と足音が聞こえなくなって、俺は1人安堵の溜息。
良かった、なんとか窮地からは逃れられた。
「…あ、ハニーちゃんやっと来た」
「遅かったな」
父さんたちは正門で待ってると言っていたから、あんな電話の後で朝生田に遭遇するのは避けたいし、さっさと正門の方に向かう。…と、正門前に外車にもたれ掛かった派手な3人組が。主に兄貴が派手だ。腕捲ってるから刺青ちらぁっと見えちゃってるし。本人はそれに対する視線なんか気にしてないっぽいけど…遠くから見たら夜の人間、良くてバンドマン…だよなぁ。否、兄貴はれっきとしたリーマンです。
「…すーばる?どうした?元気ない?体育祭疲れた?」
「え、あ…?」
兄貴に顔を覗かれ、周りから見たら今の俺が変だってことを知る。
別に疲れてはないから、元気がないように見えるのは、先の電話での朝生田の応答を一言一句間違えずに先から頭の中でリピートされているせい。
兄貴に、先あったこと言った方が良い?…否、そうしたら兄貴学校乗り込んで朝生田たこ殴りするだろうしなぁ…。
そもそも、俺があいつに学校外で会わなければ安全は保証される訳だし、あんまり大事にはしない方が良い…よな?もし、先の会話が聞かれていたと朝生田が知れば、どういう行動に出るか分かったもんじゃない。
だから、「大丈夫」って答えて朝生田のことを話しはしなかった。
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