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ここ数年、ってことは必然的にこいつは今年だけじゃなくてそれよりも前から怪我…喧嘩をよくしていた、と言うことで。
ちょっと、自分のことを思い出した。
俺は無意識に、衝動的に。毎日喧嘩して、愁に怒られてきた。俺も、その時は痛みなんてあまり感じた記憶がない。感じたときには本当に入院スレスレなほどに重傷化していたこともあった。
朝生田も、そんな感じだろうか。こいつがどんな理由があって喧嘩するのかは俺にはわからないけど、こいつには、俺の時のようにブレーキになってくれる奴がいるんだろうか。
「…まぁ、俺の怪我なんてどうでも良いんすよ。狂ちゃんは?何で外したの?」
自分の怪我を「どうでも良い」と評価し、朝生田は話題を変え俺に質問してきた。トントン、と自身が耳につけているピアスを叩いて、その金属の塊を強調してくるので主語はなかったが直ぐに理解した。
『ピアスを外した理由』。そんなのお前が俺と愁を狙ってるって電話をしてたから保険だよ…とは本人に言えるわけもなく。ただ、「気分」と返した。俺は嘘がつけないらしいからこのくらいがベストだ。
「へぇ、学校でトラブったのかと思ったんすけど違ったんだな」
「…?何で?今更だろ」
トラブルと言うが、3年間つけてきて涼しか俺に話しかけれないのもあると思うが、生徒指導に引っ掛かったことはない。それなのに3年目で初めて、なんて今更過ぎるだろう。
そう、反論すると朝生田は「違う違う」と笑いながら俺の解釈を否定した。そうは言っても学校でのトラブルってこのくらいじゃあないか…?
「俺が言ってんのは、『耳につけてたピアス"椿涼"と同じもの』だよな、ってことなんすけど」
「…え、」
「あれ、そうだよな?」
朝生田の言うトラブルが何なのか考えるが、やっぱり思い付かなくて首を捻らした。その素振りを見て俺からその答えは一生かかっても出ないと思ったのか朝生田から放たれた訂正の言葉。その言葉で体の体温が急激に下がっていく気がした。
つばき、りょう。その音で表されるもので俺が知ってるのは、1人だけ。
嘘だ、何で。ピアスなんて、小さい分シンプルなものになるとデザインも似てくる。俺は髪に隠れるところにつけたりしてることもあったし、他にもつけているから注意深く見ないと分からない、筈なのに。
「あんた、"悪魔"と付き合ってなかったんすね」
その発言の裏に隠されたもの。それはもしかしなくても俺と"涼"が付き合っているかの確認だ。しかも確認だなんて形だけで、言い方は確信に近い。
ここで投下されるとは思ってなかった爆弾。そして、恐らく今一番知られてはならなかったであろう人物に知られた、気づかれた。
その事実だけで冷えきった体が地に凍りついて、俺は動けなくなった。
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