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「あんた悪魔と付き合ってなかったんすね」
頭の中で何度も何度も繰り返されるその言葉。嫌な汗が吹き出しそうになる。て言うか、もう出てるかも。
「つ、ばき…とは、」
否定だけはしなければと、なんとか震える唇を動かした。けれどそれ以降の言葉が見つからない。どうしよう、どうすれば。何とかして脱出口を見つけようとしたけれど、朝生田は俺に考える暇すら与えてくれず、追い打ちをかけた。
「そう、あんた。『椿』ってあの人のこと呼ぶとき一瞬間があるんだよ。つまりそれって普段、"そう呼んでねぇ"ってことっすよね?人間普通慣れた方向に動こうとするもんだからな」
「~っ、」
「椿、でなければ下の名前で呼んでるんすかね」
否定なんてもう、できなかった。
間があるだなんて本人ですら気づいてなかったのに、それに気づいてるってことは、こいつは近いんじゃなくて"確信してる"んだ。俺と涼の間にある関係を。絶対そうだという確固たる自信が、そこにはあった。
「可愛いっすよねぇ。椿涼の前ではあんたずっと笑って幸せオーラ一杯で」
「え、な…?」
「あの人もあの人で、学校では感情を隠してる癖に、狂ちゃんの前では本心から笑ってる」
どうして、こいつがこんなことを知ってる?
俺と涼が2人きりでいるときはどうなのかなんて、こいつが知る筈もないのに。これははったりか?俺が表情を出せば出すほど、こいつに情報を渡すことになる?
「体育祭の種目決めの前くらい。あんたらここら辺に来てましたよね」
朝生田が携帯を操作し突きつけられたそれに、これ以上引くことのない血の気が引いていく感覚が俺を襲う。
液晶に映っていたのは、俺と涼が入ってる写真。俺も、涼も笑ってて。はったりなんかではないという事実に、恐怖しか感じなかった。こいつの何も見えない笑顔が怖い。こいつがどこまで知っていて、その情報をどう利用しようと考えているのか見当もつかない。
「熊も椿に似た色を選んだ。刺青の話に持っていって『椿』の単語を出した。あの人の方にはったりかましてみたこともあったけど、…なぁ、これだけの情報あって、否定しねぇよな?」
そして、想像以上にこいつは俺に、俺だけでなく涼にも、探りをいれていたらしくて。距離はある程度おいていた筈なのに、知らないうちに俺は朝生田に追い詰められていたらしい。
「なァ、"狂狼"。どうなんだよ」
次の瞬間、こいつからは笑顔が消えて、無表情になった鋭い瞳が俺を捉えた。口調も、雰囲気も、表情も全く違う。壁越しに聞いた電話をしていた時の朝生田だ。
やばい、逃げないと。こいつから距離をおかないと。ドクドクと脈打つ音がまるで警告音のように、全身から鳴り響く。とりあえず、隙が生まれたら直ぐ、足を動かさなければ。
「誰と話してんだ?ボス」
だがしかし。とてつもなく運が悪いことに、ある意味で強運の持ち主というべきか、背後から声が聞こえた。そいつの口から出たあだ名にまさか、と後ろを振り向くとそいつは、"そいつら"は朝生田と同じ赤系統の髪の色をしていた。
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