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背後に4人、目の前に朝生田。逃げようにも、逃げきれる自信はあまりない。2人ならまだどうにかなってただろうけど、流石に俺の足でも5人はきつい。
けど、このままここに居続けるのも危険な気がする。朝生田は、以前「俺が朝生田茜でいる限り危害を加えることはしない」と言った。
朝生田が"朝生田茜"でいるとき。それが今も通用しているのか。全員が同色をどこかに必ず身に纏ってるところからしてこいつらが朝生田の仲間なのは明らかで、先までは大丈夫だったけどこいつが『赤』として振る舞う、則ち攻撃の矛先が俺に向く可能性は否めない。
どうするのが最善だろう。喧嘩…は、街中でするのは避けたい。逃げる…のは先も言ったけど不可能に近い。自殺行為だ。逃げ道が、ない。見つからない。
「…"昴流さん"は黙って俺に頷け」
「…え、…っわ、わ…?!」
身の危険を前にし、策がないと分かった頭の中は真っ白になる。もう駄目かもしれないとも思った。また車椅子生活かなぁ、って。
しかし、隣からボソボソ、と俺にだけ聞こえる程の音量で名前を呼ばれ我に返った。へらへらしてる声でも、威圧的でもないそいつの声はこの危機的状況で、自身に余裕なんて全くない中変なくらいに耳に残った。
そして次の瞬間、朝生田によって力任せに引っ張られ俺はそいつの胸の中へ。何が起こったのか分からず、目をぱちくりさせて犯人…朝生田を見つめるが、朝生田はもう既に仲間の方を向いていた。
「"兎"だよ。見て分かんねぇのか?」
「……うさ…?」
「…あん?」
「兎」。訳の分からない単語に「頷いてろ」と言われたが初っぱなから首をかしげるしかない。否、これは無理がある。頷くよりも前に疑問が来る。兎。兎ってなんだよ。俺は人間だ。耳だってあんなに長くはないぞ。
けれど朝生田の仲間ーー『赤』では通じる言葉ならしい。…が、1人は「マジで言ってんのか?」と朝生田に問うていたので、『兎』の意味は分かるが朝生田の発言の理解ができている訳ではないらしい。
「あんた、男イケる口だったか?」
「…文句あんのか?」
「良いや?…てことはさァ…、"貸し借り"構わねぇってことか?」
「かし……?」
また訳の分からない『赤』用語が。貸し借りって何が?話の流れ的にされるものって俺?……え、俺??俺のレンタルショップ?誰のためにあるんだそれ。
彼らの会話に1人ついていけず、頭の上に大量のはてなマークを浮かばす。そんな中、気のせいか俺の肩を掴んでいた朝生田の手の力が強まった。
「それはただの"セット"だろーが。殺すぞ」
「ふは…、冗談だ。怒んなよボス」
朝生田の脅しにも臆せず、ケラケラと笑う男。今度は気のせいではなく、痛いくらいに肩へ力が入って、俺の肩を砕くつもりかと睨むつもりで顔を上げた…ら、見えたものに俺は一瞬目を疑った。俺はこいつらの会話が全く分からないが、朝生田にとっては地雷だったらしく、朝生田の表情は怒りに満ちていた。こんな表情、初めてみた。笑顔でもなく、無表情でもないこの顔。一体どこに怒る部分があったのかも俺には不明だが。それと同時にこんだけ怒らせといてこいつら笑ってるってすげぇなぁ、って謎の感心も覚えた。
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