アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
「何やっと俺のお嫁さんになる気になった訳?」
「や、そういうのじゃないんで」
朝から玄関先が騒がしい。朝御飯を作っていた手を止めて何だ何だと玄関を覗いてみると、兄貴に抱きつかれて身動きとれてない愁の姿があった。
あの遅刻常習犯の愁が、こんな早くに、しかも俺よりも早くに用意ができてんのは昨日朝生田に言われたことを愁に話したからだろう。
朝生田の言うことに愁は怪しんでいたけど、狙っていると本人が頷いた以上、1人きりになるのは朝生田に言われなくても避けた方が良い。それなら互いの家の距離もそう遠くないし一緒に行くか、ってことになった。待ち合わせじゃあないのは俺が朝食に誘ったからだ。だって朝全然食べてなさそうで心配なんだもん。
「しゅーう。これを機に一緒に住もうぜ?一緒にお風呂入って寝て~…」
「えぇ…俺流星さんにずっと引っ付かれないと駄目じゃん」
「流星お兄ちゃんって呼んでも良いよ」
「遠慮します~」
口説くも適当にあしらわれてる兄貴。俺も流星お兄ちゃんって呼ぶのはなぁ、とか思ったけどそれ言ったらふてくされそうだから言うのをやめた。
「愁、ごはん後ちょっとだから待ってて」
「待つ待つ~ルウちゃんの朝御飯~」
るんるんと朝食を楽しみに待っている人がいるのは作ってる人間としてはとても嬉しい。それが暫く1人から2人になるって言うんだからいつもよりも心なしか張り切って一人分を多めに作ってしまった気がする。今日はパンが切れてたからお米、和食だ。だし巻き卵が自信作。
「久しぶりに朝御飯食べる~」
「やっぱりいつもは食べてねぇの?」
「チョコ食べてる」
「それ間食じゃねぇ…?」
愁が三食きちんと食べてるのか不安になってきた。全部まさか菓子で済ましてるのか??あ、でも昼は弁当だったりパンだったりしてる。良かった。ちゃんとしたのも食べてた。…晩は、どうなんだろうなぁ。お前マジで菓子以外も食べろよ。
「あー!たまご!それ何?普通の?」
「んー…甘めのだし」
「だし!俺一杯ね」
「はいはい」
ひょっこりと台所を覗いてきた愁に、丁度切っていた卵焼きが見つかってしまう。甘党2人のために甘めの味付けが施された卵焼きは2人とも好きだと言うのは分かっているから多めに作った。愁の要望通り、愁の皿に卵焼きを4切れ盛り付ける。
「もっと」
「えー…後何個?」
「んー、3個くらい」
…が、それでは満足してくれなかったようで。やっぱり多めに作っといて良かった。
「あーにーき。ご飯できた」
「まって。今顔洗ってる」
他のおかずも盛り付け終わって、リビングにはおらず、恐らくどこかの部屋にいるんだろう兄貴に声をかける。どうやら顔を洗っていたらしく洗面所の方で声がした。
「ふー…お待たせ。…卵!何これなんの卵?」
「だし巻き」
「ハニーちゃん分かってる」
洗面所から戻ってくるなり、皿に盛り付けられた淡い黄色をしたそれに眼を輝かせる。2人して似たような反応だ。
「愁はこっち、昴流はこっちで俺は真ん中」
「その席順の意味は」
「俺得」
「ですよね~」
テーブル席だと1人向かい側になってしまうからと言う理由でソファに3人1列で、兄貴に指定された席に座る。ソファに座って食べることなんて食卓があるから滅多にないけど、まぁ、たまには。これも楽しくて良いかもしれない。
「いただきまーす」
朝生田関係のことで色々とごたごたしているとは思えないほど、温かくて、けれど騒がしくもあり。そんな朝で1日が始まった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
894 / 1113