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「……お前が、あいつのことどう評価してんのかは知らないけどな、俺らは知ってる。初代がここを築き上げる前から俺らはあいつと知り合いだった。ーー嗚呼"友達"って奴だったのかもな」
「え…、」
俺がその疑問を口にすると、ツキは鼻で笑った。こいつの言い方では、恐らく朝生田との関係を持った年月はかなりのものだろう。もしかしたら小学生の時からすでにそうだったのかもしれない。それに、友達と来たもんだ。
なら、尚更分からない。そんなに長く付き合ってきた相手なのにどうして。どうして疑わしいだけで切り捨てることができるんだろう。俺なら、もし愁を疑ってもちゃんと話を聞くと思う。
愁のこと理解してると思っているから、愁のこと大好きだから、愁のこと信じているから。だからこそそれが自分が裏切る行為だってことを簡単には信じない。否、"信じたくない"だろう。『友達』と言える以上の関係なら「何か訳があるんだろう」って思いはしても、自分を裏切ったと簡単に思えるはずがないんだ。
「…ま、あいつは変わっちまったってことだよ。悪魔に魂売ったみてぇにある日突然"ああ"なった。嗚呼………もっと良い例えがあるな。魂抜けた『人形』が"悪魔に操られてる"。ーー兎に角、俺らが知る『アカネ』はもういない。感じたことねぇのか?あいつの背後にあるモン。裏で何してるか分かったもんじゃねぇよ。"噂"ではかなり色々とやってるらしいしな」
それに言い返せなかった。だってこいつの言う通り、俺は朝生田に何度も恐怖を覚えた。何を考えているのか分からないそいつの笑顔に。こいつらも、そうなんだろう。なら、こいつらが朝生田を信じることができない理由は、自分達が知る朝生田からかけ離れてしまったからなのか。
ーでも、そんな急に変わるもん…?ー
突然そうなるなんてことはない筈だ。きっと予兆はあっただろう。何か、理由がある筈だ。昔の朝生田が"嗚呼"ではなかったのなら、今の朝生田になった理由が。そうさせる出来事が。俺が勉強漬けなのが苦しくって、逃げ出したように。
「朝生田に、昔何か……」
「ーーあいつのことよりも。お前は"こっち"に集中しろ」
「ぁぅ…?!」
朝生田のことを問おうとしたら、それを遮るように乳首のピアスを引っ張られた。朝生田のことにはもう触れてほしくないみたいに。
こいつの話に意識が向いていたのもあって、軽く引っ張られただけだったけれど驚いて大きい声が出てしまった。それが恥ずかしく、きゅう、っとまた唇を噛みしめる。驚いただけじゃなくて、薬のせいで敏感になっているんだと分かってはいても、相手が涼でない以上どんな理由であれ声を出してしまった自分が、許せなくて。
「…ん、っん…ゃ…」
「…だから、噛むな」
震えそうになる喉が自分のものじゃないみたいで気持ち悪い。いっそうのことこの瞬間だけ喉がなくなってしまえばいいのにとも思う。
そうやって、なんとしてでも喉を振動させまいと下唇に歯を食い込ませていたが、これまた先と同様ツキに注意されてしまった。
なんで、こんなにも俺が唇を噛むことに五月蝿いんだろう。放っておけばいいのに「血が出る」からと、止めさせようとする。女扱い…とはまた違ったもの。こいつらがやろうとしているレイプの方法にも合わないそれ。こればかりはどうやってもわからなかった。
ーなんで、俺のこと…"心配"してんだろー
そう、言葉にしてしまえばそれだ。こいつは、俺のことを心配している。唇が切れたら痛いだろうって。それは…性別云々関係なしにこいつの"良心"だろう。そう、良心。こんな非道な行為をしているというのに、それとは間逆な心が、こいつには残っている。俺にはそう感じた。
とても矛盾していると思う。そんなものがあるなら復讐なんて実行する前にどこかでブレーキがかかるだろうに。それに、ここまで恨んでる相手にそんな感情抱けるものかという疑問も湧く。こいつは、少し"中途半端"だ。そんなツキの行動を咎めない彼らも、そうなのかもしれない。
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