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次の日、愁は学校に来なかった。
サボりで来ないなら俺に連絡してくれる。
だけど、来ていない。言い換えれば伝えるほど余裕がなかった。
てことは"あれ"。
愁は毎月必ず1回は連絡をせずに休む。
それが2回の時もあるが、基本それは1か月周期だ。
簡単に言えば家庭内の都合。
どう言った内容なのかは知っている。
それが愁にとって"落とすだけじゃあ気がすまないくらい"な事だってこと。
あいつの家庭は俺と同じで色々とフクザツ。
それ絡みの休み。
あまり触れて欲しくないのは俺が一番良く分かってるから、愁に連絡をすることはしなかった。
学校が終わったらあいつの家に行こう。
荒れて手がつけられない状態だろうから。
そんなあいつを、俺がしてもらうように落ち着かせるのが俺の"役割"だから。
「魔咲は居ない…と。連絡来てないんですけど狼城君何か聞いてますか?」
S.H.R.の時間。居ないならそこで終わらせとけば良いのに、聞いてくる椿。
俺に聞いたのは、愁が連絡を取りそうなのが俺くらいだからだろう。
知ってるけど教える訳が無い。
家庭内の都合?それこそ連絡を入れろって話になる。
俺も、あいつも自分の深いところまで詮索されんのは嫌いだ。
…じゃあ、病気って言うか?どうせ連絡が来てないんだからサボりだろうと決めつける。
正直に言わずそれっぽいことを言ったって、サボり決定なら言う必要なんてない。
「聞いてねぇよ」
「そうですか、分かりました」
椿が出席簿にペンを走らせる。
書き終わると机の上に積んでいたプリントを配り始めた。
前のやつがビビりながら俺に渡す。
それを受け取ってまたしてもビビる後ろのやつに回した。
何もしたりしないのに。そうされたら逆に苛々するって気づかないんだろうか。
「えーっと…来週中に親御さんに書いてきてもらってください」
見る気はなかったけど親宛ってことは兄貴に書いてもらわねぇといけないやつだと分かって机に突っ込もうとしていた手を止めて、そのプリントを見た。
プリントには『授業参観と保護者会のお知らせ』と最初に書かれていた。
ー下らないー
「出してもらわないと色々と困るので…必ず親御さんに出すように」
『親』『親』『親』『親』。
プリントにも、椿の言葉にも出てくるその言葉。
無意識にグシャ、そのプリントを握り潰していた。
こういう行事に良い記憶なんて全くない。
幼い頃、仕事で帰りの遅い親が目を通せるよう、分かりやすい場所に便りは置いてた。
参加、不参加を問われる奴もそこに一緒に置いてた。
幼い時は、それを楽しみにしていたけれどいつもいつも朝起きてみると不参加に丸され、切り取り線で綺麗に切り取られた紙切れがあって。
俺はそれに対して親に「行けない、ごめん」すらも言われたことがない。
仕事が忙しいのは分かってる。家で俺と会える時間が合いにくいってことも。
けれど、何も言われないのは行かないのが当然みたいに言われてるようで、結局一度も学校行事に家族が足を運んでくれたことはなかった。
それを思い出して、胸が苦しくなった。
サムイ、凄く。
「ちょ、狼城君?!まだ話はーー…」
「…うるせぇ」
聞きたくない話をするこの教室にもういたくなくて、椿が話している途中で教室から出ていく。
愁は居ないのに、開いていないのに、俺の足は屋上の方へ動いていった。
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