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「げ……やべ…」
クスリと笑った直後、椿が腕にしていた時計に目をやって、まずそうな顔をした。
何がヤバかったのか、急に慌ただしくなった椿を見て首を傾げていると、「授業俺1時間目から入ってんの。お前もだけど」と言って、時計を見せてきた。
時間は9時20分。始業から20分が経っている。
「…別に良くね」
「サボり魔と違って俺仕事!」
「…こんなとこに来なかったら良かった話だろ」
「馬鹿、惚れてる奴の様子がおかしかったら気になるに決まってんだろ」
俺としては社会人が公私混合する方がどうかと思うけど。
俺は遅刻しても今から教室に戻れば出席数は稼げるし構わない。お前の場合は自業自得だろう。俺なんか、気にしなければ良かったのに。
…でもまあ、
「…あり、がと」
俺を優先してくれることが、少しだけ嬉しかったのも嘘ではない。
俺が礼を言ったら、嬉しそうに笑って、「おう」と俺の頭を撫でた。
俺よりも大きい手。安心できる大きさで、嫌な気はしなかった。
「お前も授業受けろよ?…いや、その前に保健室行って下着変えてくる?」
そこちゃんと心配してくれるんな。お前が汚したって言っても過言ではないのに。
正直出来るもんなら穿き替えたい。けど下着だけ替える為に保健室行くとかプライド捨てに行くようなもんだろ。
馬鹿か、こいつ。
んなこと誰がするか。
「…トイレで拭くから良い」
「そう?…ま、そこで頷いてたら止めに入ってたケド」
何だよ確信犯かよこいつ。今凄ぇムカッときた。
「じゃあな狼。ちゃんと受けるんだぞ」
「…、んっ」
俺に触れるだけのキスをして、教師らしい注意をした後椿は時計を見ながら階段をかけ降りて行ってしまった。
残るのは俺1人。
その空間が寂しいと思っている自分に気づかないように、俺はすぐに早足でここから立ち去った。
どうでも良い存在から大嫌いな存在へ。
短期間の内に付け加えられた次の心の変化。
ほんの僅かにだが、前程椿のことは嫌いじゃなくなっていた。
ー普通は、逆だろうにー
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