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放課後、スーパーに寄ってから愁の家を訪れた。
多分あいつ今日何も食ってねぇから、向こうでなにか作ってやるつもりでいた。
愁の家は小さいけれど綺麗なアパート。
きちんと防音設備も整ったところだ。それなのに家賃は安く、愁はかなり満足しているそうだ。
魔咲と書かれた表札を見つけ、その部屋のインターホンを鳴らしたが、返事はなく鍵は開いていた。
愁が外に出たとは考えにくい。1日中鍵が開いてたなんて不用心だな。取られるもんねぇからって鍵閉めないとき多いけど、閉めろよって思う。1人暮らしなんだから。
中に入って台所に買ってきたものを置く。
家の中は本当に人がいるのかと疑う位に静かだった。リビングには雑誌が散乱し、ビールの空き缶も転がっていて、灰皿には煙草が何本か擦り付けられている。
雑誌は閉じて重ねて起き、塵は塵袋へ。リビングがある程度綺麗になったら愁が居るであろう彼の自室に足を運んだ。
ドアを開けて辺りを見渡すとリビング以上に部屋が荒れていた。
棚が変な位置に移動して、そこに置いていたのであろう香水や本が床を埋め、本の中には破けているものもあって、破けているページが本の周りに散らばっている。その中には教科書もあった。
…食べるよりも前にこの部屋をどうにかしなくては。
「愁、部屋片付けるーー…っぐ、ぅ…」
「出て行け」
歩ける場所を探して中に入ってドアを閉めた刹那に首に圧迫感。
目の前には無表情のここの家主。愁に俺の首を絞められたと理解するのはすぐのことだった。
"本当にしたかった相手"と俺を重ねて、俺の事が分からなくなっているんだろう。
「愁、俺だ。落ち着…」
「出ていけよ、なあ…っ!」
何度呼びかけても俺の言葉を遮ってそう言うだけ。
愁の手に入る力が段々と強くなっていく。
頭に回っていた血液が薄くなる。
ちょっとそろそろヤバイ。意識飛びそう。つか死にそう。
死ぬのは勘弁だ。
…だけど、
「お前が俺を殺したいんなら殺れば良い。俺は、それを受け止めてやる。…愁、俺を見ろ。本当に俺は"お前がそうしたかった"相手か?」
俺はただ真っ直ぐ愁を見つめた。
少しだけ無表情だった愁の瞳が揺れ動き、手の力も微かにだが緩まった。
後、一歩。
俺は愁の手に自分の手を当てて、愁にもう一度語りかけた。
「愁、ちゃんと俺を見ろ。俺は、誰だ」
その言葉に、我に返ったのか愁は力の抜けた腕を下に垂らした。
「あ…あ…すば、る」
「嗚呼」
「くるし、かった…?ごめんな…?」
申し訳なさそうにさっきまで自分が絞めていた俺の首を震える手で壊れ物を扱うかの如く優しく撫でてくる。
俺はそれに「このくらい平気だ」と答えて、小さく微笑んでやると愁は安堵の表情を見せた。
「ほら部屋片付けて飯食うぞ」
「…ッ、嗚呼」
2人で床に散らばった物を戻していく。もう読めない本は纏めて紐でくくり、破れたページは塵袋の中へ。
部屋を掃除しだして30分程。部屋は前の状態にほとんど戻った。
まだ今までの中では短い方。酷いときは2時間とかかかったし。
「今日は、何が良い。どうせ食べてないんだろ」
「昴流が作るなら、何でも良い」
「そう。じゃあ、作り置き出来る奴にするな」
「…嗚呼、サンキュ」
一杯になった袋を結び、玄関近くに置いたらレジ袋に入れていた食材を広げて台所に立った。
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