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そいつは気付くとすぐに怯えながら謝ってきて、お仲間さんと一緒に逃げて行った。
そこまで怯えるのなら、最初から絡んで来なければ良かったのに。…嗚呼、気付いていなかったんだった。
「怯えすぎ~。やばぁ傑作」
最初とはまるで別物の、遠くなっていく縮こまった背を見ながら愁は隣で爆笑している。
…まあ、何はともあれ喧嘩無しで乗り切れたんなら"最恐"なんて大袈裟な肩書きに感謝だな。
つか、最初から俺等がそう言われていると言えば良かったかもしれない。
「おい」
「ヒィ…っ?!」
絡まれてたやつに声をかけただけなのに怯えられた。しかも目逸らされた。
金なんて取らねぇし噂みたいに目が合っただけで殺したりしないのに。
「絡まれたくねぇならこの時間にここに来るな。一緒に来た奴とさっさと帰れ」
1度絡まれたんだからもう寄ったりはしないと思うが、忠告を入れる。
そう言ったのは気分だ。別に大した理由は無い。
忠告するだけすると、愁に「行くぞ」と声を掛け、ゲーセンから外に通じる扉を潜った。
「ルウちゃん優しい~」
「…そんなのじゃねぇよ」
優しくしたつもりはない。
現にあいつを助けようとは思って無かった。
きっと俺が優しいのなら、見て見ぬふりなんてしなかった筈だ。
「最終的にはちゃんと危ないって言ってあげるとこかさー。不器用な優しさ?」
「…そんなんじゃ、無い」
優しさで動いた訳じゃない。
俺は、知らない奴に優しく出来るほど器用な人間じゃあないから。それを俺が一番良く分かってる。
「ルウちゃんは優しいよ。俺が知る誰よりも」
「…それはお前だろ」
「またまた~」
愁とは出会いこそ良いものだったと胸を張って言えるものではなかったが、その後何度も助けられてきた。優しいのは俺じゃなくて愁だ。
「…ふふ、そう言う所が好きだよルウちゃん」
「…っうお…?!」
いきなり愁に抱き着かれた。重い体重掛けるな馬鹿。
「その優しさに思い上がることは無い。その上優しいから傷付きやすくて。別に全員を平等に扱うのが優しさじゃあない。それはただの偽善者だ。…俺は昴流の優しいとこちゃんと分かってるから」
「あ、嗚呼…?」
「だーいすき。だから話し掛けただけでビビられたこと一々気にしてんなよ?勝手にビビらせとけ」
「…気にしてない」
「うっそー。学校でも見られて怯えられたらむっすーってすんのにお前」
「してねぇ。…俺が悪いって分かってる」
「…そう言う所なんだけどなぁ」
そりゃあ、ちょっとイラついたりはするけど向こうを責めたって意味が無い。
俺が悪いって割り切ってる。怖がる向こうが悪い訳じゃない。
別にそこまで気にしていないのに、愁にはそう見えたのだろうか。
…やっぱり、優しいのはお前だよ愁。
「…でも、サンキュ」
だけど、尻を揉んでくるのは止めてくれないか。
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