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『梅雨』。
名前から分かる通りに晴れなんて滅多に無くてじめじめしたこの季節。
俺はこの季節が大嫌いだ。
「しゅ、う…」
「…はいはい」
気温の変化が激しく、雨が降っている時は少し肌寒いと言ってもそこまで普通ならば厚着をする必要はなく、半袖な人も居る中でカーディガンにブレザー、それからワイシャツの中に1枚Tシャツ…という感じに着こんだ俺はかなり浮いていると思う。
だけど、寒いのだ。何枚着ても、幾ら厚着をしても体の芯は冷え切っていて。
着込んでも寒いから俺はずっと愁に引っ付いてる。
梅雨になると真冬みたいに寒く感じてしまうきっかけになった出来事は色々あるんだが、まあそれはまた今度話すと言うことで。
雨のせいで屋上に行くこともできないからずっと教室にいるのだが、結果身動きのとれない愁は仕方無しに俺の机に自分の机を引っ付けている状態。
「梅雨の時に不安定になんのは相変わらずだな…」
「ぅ…?」
「羽織ってろ、俺はそこまで寒くねぇから」
愁がさっきまで着ていたブレザーが俺の肩に掛けられる。
愁が好きな煙草の、少し甘い匂いが微かに染み付いているブレザーに鼻を埋めたらふわっと愁の匂いが広がって、それが俺を落ち着かせてくれる。
「保健室行っても良いんだぞ?俺もついて行ってやるよ?」
「…動くのだるいから良い」
「了解」
教室で引っ付いていると目立ってしまうから愁に気を使わせてしまったのだろうけど、今から歩いて1階の保健室に…なんて気が起きないから断って、愁の腕に腕を絡ませ、腕に擦り寄る。
愁の体温で温かくなったワイシャツ。
服越しでも伝わってくるその熱が気持ち良い。
「…ン、ぅ…」
「こら嗅ぐな」
「…す、きだから」
「…あーはいはい。好きなだけ嗅いどけ」
すん、と鼻を動かすと愁が苦笑し、止めるように言ってくる。
けど俺が首を横に振ると諦めたのか空いてる手でポンポンと頭を撫でてきた。
「嗅ぐのは良いけどよ、辛くなったら言えよ?ちゃんと。2人になれる空き部屋あるか探すから」
「…嗚呼」
「ん、良い子」
引っ付かれても嫌そうな素振りを見せず、俺がしたいようにさせてくれて。
俺は寒いが、愁は脱いだ位なんだから暑いんだろうに、俺に寄り添ってくれる。
布団を被っても、いくら厚着をしても寒かったのに、それだけで温かくなった気がした。
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