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「インラン」
そいつはそう言って嘲笑った。
否定はしない。
現にも俺は、目隠しは取られ、手錠も、足を縛っていた鎖も外された。
殴ろうと思えばいくらでも殴れるのに、そうはせずただ腰を振って善がってる。
バイブには無かった安心感で心が満たされて、これが性行為なのか、暴力なのかもどうでも良くなって。
ただ、ただ目の前の温もりに縋ってる。
救いようのない淫乱な奴。
「あ…んっ、あっあぁ…っ、おなか、あったか…ん…ふぁ、あ…」
「…マジで淫乱だな。ふっつうレイプされて自分から求めるか?」
「あ…、あっ、もっと…熱いの、欲し…さ、みぃから……っ」
男の背に腕を回して抱き着いた。
赤色の髪。愁とも椿とも違う染み付いた煙の臭い。
あの2人よりは温もりは感じられなかったが、それでもこうしてると落ち着いた。
「なぁ、おい。ビッチ。悪魔電話に出ねぇんだけど」
「っあ…?しゅー…?」
俺の携帯を耳に当てて、愁が電話に出ないと訴えてくるそいつ。
俺の乱れてる姿を報告でもするつもりだったのだろか。
「お前の恋人は自分から誰これ構わず男求める淫乱野郎だ」とか言って。
「ンぁ、あっ、しゅ、バイト、ぉ…っ」
「…はぁ?もう12時来たぞ」
愁が、いつまでバイトしてるかまでは知らない。けれど12時ならまだやっている頃だろう。
もし、愁がバイトが無く、電話に出れていたら愁は俺のことをどう思ったのだろうか。
流石の愁も、こんな俺を淫乱だと軽蔑するのだろうか。
…嗚呼、怖い。それは嫌だ。
それだけは嫌だ。
愁にだけは軽蔑されたくない。
俺を一番分かってくれるのは愁なのに。俺の理解者は、俺には。愁しかいないのに。
愁に軽蔑されたら、愁にも見放されたらどうすれば良いのか分からない。
また、また俺の中は真っ暗になってしまう。それは嫌だ。止めてくれ。
だから正直、愁がバイトの時間で出れなくて安心した。
愁が俺の傍からいなくなる。そんな最悪なケースを考えないで済むから。
「この椿って誰?コイビト?」
「っあ、ん…ん…っ違ぇ」
アドレス帳に入った椿の電話番号がかかれた画面を俺につき出す。
前、椿に「困ったときは電話して」と押し付けられたその番号。
登録はしたけど1度も連絡はしたことがないその番号。
恋人…"セフレ"ではないと首を振っても、男は信じてくれる様子は無かった。
「誰これ構わずヤるんだから恋人一杯いるんじゃねぇの?」
「い、な…ぁアッ…ン、俺、しゅ、とだけ…っえっち、しゅー、っと…っ」
「…おいおい、現にも俺に股開いてんじゃねぇか。まぁ…、そうじゃなくても良いか。悪魔にし返すつもりでいたが、あの狂狼が糞ビッチってことも知れたしなぁ…。お前で”代用”してやるよ」
「っあ、駄目…駄目…ッ!!」
その画面から発信画面に移るのが見えて、携帯を奪い返そうと手を伸ばした。
愁が電話に出ないと分かり、矛先の方向を俺に変えたのだ。
こいつが、愁にそうされたのかもしれない。こいつと誰かの仲を最悪な形で引き裂くってこと。
こいつのは、復讐だけど復讐じゃあない。
要は、味合わせたかったんだ。自分と同じ苦しみを。
やり場のない感情を、何でも良いからどこかにぶつけたかった。
それが最初は標的である本人。けれど本人は電話に出ないからターゲットが俺に代わって椿に電話を掛けた。
恐らく、そう言うことだ。
元々、俺等にそんな大した関係は築かれていない。
アドレスも、俺の一方通行。しかも不本意ながら追加されたものだ。
これも、こいつの勘違い。
なのに、なのに。
電話が繋がってしまうことに恐怖を覚えた。
愁のとは別の恐怖。
椿は俺を好きって言ってくれた。屑だけど優しくて、こんな俺を守ってやりたいって言ってくれた。
けれど、どうだろう。"こんな"俺を知っても尚、そんな感情を抱いてくれるだろうか。
こんな俺を、汚い俺を知ってほしくない。
知ったら俺が好きだって、守ってやりたいって言ってくれなくなる。
そうしたら、もうあいつの手に触れてもらうことは無くなる。
意味分かんない奴だし、セクハラしてくるし、ど屑だし。宇宙人だし。
決してあいつのことは好きじゃないけど、でも最近は確かにちょっとずつでもあいつのことそこまで嫌いじゃなくなってきてて。
温かいって。安心できるって。信じれるかもって。
久し振りに新しく、温かいと感じる人が出来たのに。
「やだ…や…っかえ、せ…っ返せぇ…っ!!」
「…っつ゛…ってぇ…」
男を殴って、持っていた俺の携帯をもぎ取って。
コールを切ろうと、震える手でボタンを押そうとしたその刹那。
『誰ですか?』
画面が切り替わったと共にご丁寧にスピーカーにされ、良く聞こえたその声。
「ぁ、ああ…、」
ー終わったー
一気に体の力が抜けて携帯が手から滑り落ち、何かが崩れるような音がした。
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